2016 Fiscal Year Research-status Report
イネの収量形質に関わる耐塩性機構と関連遺伝子座の解析
Project/Area Number |
16K07573
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
平井 儀彦 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (80263622)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | イネ / 耐塩性 / 収量 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネは耐塩性が低いことが知られており,耐塩性の向上が求められているが,収量向上に重要な耐塩性機構や遺伝子については十分に調べられていない.そこで本年度では,長期塩条件での耐塩性に関わる染色体領域の特定と耐塩性機構を検討するため,(1)塩感受性品種コシヒカリの遺伝背景に耐塩性品種Nona Bokra の染色体断片が部分置換された系統と(2)コシヒカリの遺伝背景にIR64の染色体断片が部分置換された系統の2集団を用い,親品種とともに栄養成長期から収穫期まで塩処理を行い,さらにそれらの系統の器官別イオン含有率を調べた. その結果,コシヒカリ/Nona Bokra系統群から長期塩条件下における穂揃い期の個体乾物重の向上を示す5つの系統を見いだし,その内,2系統は穂数の増加,1系統は登熟歩合の向上を通じて,精籾重の向上にも関与していた.さらにこれらの系統の個体乾物重,精籾重および穂数は,穂揃い期の個体のNa+,Cl-含有率と負の相関が認められ,Na+,Cl-の吸収抑制能が塩条件における乾物生産と収量向上に重要と考えられた.さらに,コシヒカリ/IR64系統群からは,コシヒカリ/Nona Bokra系統群とは異なる領域が置換された2系統で,個体乾物重と精籾重が向上する系統が見いだされ,Na+,Cl-の吸収抑制能が乾物生産と収量向上に関与すると考えられた,コシヒカリ/IR64系統群で耐塩性を示す系統が少なかったことは,IR64がNona Bokraよりも耐塩性程度が低いことが関係すると考えられたが,IR64にはNona Bokraとは異なる耐塩性機構が存在すると考えられ,注目された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長期塩処理条件下で収量形質において耐塩性の向上を示す系統が複数見いだされ,それらが穂揃い期のイオン含有率と密接に関係することを見いだしており,耐塩性に関わる染色体がほぼ同定され,さらに,それに関わる機構が明らかになった.また,耐塩性を示した系統のF2集団を作成し,QTL解析の準備を進めた.
|
Strategy for Future Research Activity |
耐塩性が示された系統のうち,特に耐塩性が強い4系統について,長期塩処理を行い収量に関するQTL解析を行う.さらに,それらの系統から,準同質遺伝子系統の作出を進める.
|
Causes of Carryover |
ほぼ計画通りの経費を使用し,一部を本年度より物品費の少ない次年度に繰り越すことにした.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬等の消耗品の購入に使用する.
|
Research Products
(1 results)