2016 Fiscal Year Research-status Report
水稲登熟期の稲体内窒素動態の解析―解析材料育成とそのための基礎研究―
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16K07578
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
塚口 直史 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (40345492)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水稲 / 窒素動態 / 量的形質遺伝子座(QTL) / 玄米タンパク質濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、登熟期の窒素分配特性が大きく異なる水稲2品種を親とするF2およびF3集団を用いて窒素分配特性および登熟期の稲体窒素動態に関与する量的遺伝子座(QTL)の解析を行うこと、およびそれらのQTLに関する準同質遺伝子系統の作出を目的とする。平成28年度は両親品種およびF1を各10個体、F2世代180個体を石川県立大学附属農場の水田で栽培した。出穂期までは両親品種の慣行に従い、出穂期以降は多肥条件とした。およそ1200のSSRマーカーから両親間で多型を示す88のDNAマーカーを得た。幼苗期に各F2個体の葉身からDNAを採取し、上記マーカーについて遺伝子型を調査した。各個体の遺伝子型データについてMap maker ver. 3を用いて連鎖解析を行い、全長1730 cMの連鎖地図を作成した。各F2個体の出穂期および出穂期とその後1週間毎に葉色(SPAD値)を調査した。各個体の成熟期に地上部を刈り取り、稈長、残葉数、茎葉乾物重、穂数、籾数、玄米数、および玄米重を測定した。各個体の茎葉乾物試料および玄米を粉砕し、茎葉窒素濃度および玄米タンパク質濃度を求めた。各個体の稲体窒素含量、玄米重および玄米タンパク質濃度を用いて窒素の移行性を示すパラメータを算出した。上記の表現型に関するQTL解析をWindows QTL Cartographer ver. 2.5を用いて行った。玄米タンパク質濃度に関与するQTLは3か所で検出され(LOD値3.0以上)、そのうちの2か所は茎葉窒素濃度に関与するQTL領域と重なった。登熟期の窒素の移行性を示すパラメータに関するQTLは3か所検出され、そのうち高い作用力を示す2つの領域は、玄米タンパク質濃度に関与するQTLとは一致せず、玄米タンパク質が高い親品種由来のアリルが移行性を高めることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目である28年度は、予定通りF2世代を用いたQTL解析を行うことができた。連鎖地図に関しては平均マーカー間隔が20 cM程度まで作成することができたが、第1、8、11、12染色体にマーカー間隔の広い個所が存在する。すでに1000以上の公開されているSSRマーカーを用いており、またマーカー間隔が広い個所ではさらに利用可能はマーカーが存在しない個所もあることから、CAPSマーカー等の作成のためにSNPの探索も必要かもしれない。各F2個体から採種でき、29年度はF3世代を用いた解析を行うことができる。また、登熟期稲体内の窒素移行性を示すパラメータに関しては様々な方法で算出を試みており、いずれも一長一短あるため、29年度のF3世代の解析での検討課題としたい。両親品種を正逆で交配したF1世代個体それぞれにその供与親品種を花粉親として戻し交雑を行った(BC1F1)。F2におけるQTL解析結果が得られれば、BC1F1世代において当該領域をヘテロで持つ個体を選抜し、それを用いた次の戻し交雑を予定していたが、F2におけるQTL解析が間に合わなかったため、29年度にBC1F1世代において当該領域をヘテロで持つ個体を選抜して次の戻し交雑を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度のF2世代を用いたQTL解析の結果、稲体による窒素の吸収、利用およびその稲体内の移行に関するQTLが検出された。これらについて環境要因(窒素利用可能性)の影響を明らかにするために、29年度のF3世代を用いたQTL解析は登熟期以降多肥条件および少肥条件の2水準の施肥条件で行う。上記のように、連鎖地図においてマーカー間隔が広い個所が存在するので、公開されたSSRマーカーから多型マーカーを得る作業を引き続いて行うとともに、一部の領域では公開済みの利用可能はマーカーが存在しないことから、CAPSマーカー等の作成のためにSNPの探索を行い、より詳細な連鎖地図の作成を目指す。また、28年度に明らかになった、登熟期稲体内窒素動態への関与が示唆される複数のQTL領域に関する準同質遺伝子系統の作成のために、戻し交雑とマーカー選抜を進めていく。
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Causes of Carryover |
学生アルバイトの雇用を予定していたが、他の予算で雇用できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
PCR試薬等の試薬の購入に充てる(当初の予定以上に使用量が多いため)。
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Research Products
(5 results)