2017 Fiscal Year Research-status Report
同一ゲノムを重複させたハスカップの同質遺伝子倍数体作出による倍数性育種基盤の構築
Project/Area Number |
16K07584
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
星野 洋一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (50301875)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ハスカップ / 二倍体 |
Outline of Annual Research Achievements |
同一の遺伝子型を持つハスカップ(クロミノウグイスカグラ)の倍数体を作出するために実験を進めた。北海道の野生のハスカップの多くは四倍体であり、二倍体は北海道東部の一部にのみ分布していることが分かっている。倍数体誘導の起点となる倍数体は二倍体とし、二倍体から高次倍数体を作出する計画を立てた。前年度の研究において、コルヒチン処理による倍加の効率が低かったため、北海道東部の野生の二倍体集団を調査し、その遺伝的多様性を解析して、コルヒチン処理による倍数体誘導の適した材料の探索を行った。北海道東部のチライカリベツ川流域のハスカップの自生地を調査し、個体ごとにGPS(global positioning system:Oregon 450TC, Garmin)で地理情報を記録した。成木から1-2枚の葉を採取し、フローサイトメーター(Ploidy Analyzer PA)で倍数性の判定を行った。また、花の各器官のサイズ、果実サイズ、果実のBrix、pH、種子数を測定した。チライカリベツ川流域のハスカップ自生地では、調査した全ての個体が二倍体だった。さらに内陸の別集団の倍数性を解析したところ、多数の二倍体個体の中に少数の四倍体が含まれる集団もあった。花の各器官のサイズ、果実サイズのデータから、その多様性を解析した。雄蕊の長さと雌蕊の長さの比率に多様性があり、果実サイズと相関もみられた。二倍体果実の平均果実重は新鮮重で0.28 gであった。これは札幌市の北海道大学・北方生物圏フィールド科学センター・生物生産研究農場で栽培した四倍体の平均果実重1.41 gよりも小さな値であった。チライカリベツ川流域から採取した1果実の平均種子数は7.49だった。個体ごとの種子を識別し、無菌播種を行い、コルヒチン処理のための材料の育成を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画したコルヒチン処理による倍数体誘導の効率が低かったため、コルヒチン処理の対象となる二倍体集団の遺伝的多様性の解析とコルヒチン処理に適した材料の探索が必要であると考えた。そのため、2017年度についてはハスカップの野生集団の調査に注力したため、全体計画の中ではやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
倍数体誘導の材料となるハスカップ二倍体の種子を得て、現在、無菌播種による実生苗を育成中である。種子親の各個体を識別して種子を採取しているので、種子親の表現型を参照して倍加処理(コルヒチン処理)を行い、コルヒチン処理に適した材料の選定とコルヒチン処理条件の検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
倍数体誘導の対象となるハスカップの野生二倍体集団の解析を重点的に行ったため、倍加誘導のための実験と倍数性判定の実験に使用する試薬類、消耗品類の支出が予定より少なかった。これらの事由により、次年度使用額が生じた。2018年度には予定通り倍数体誘導の実験を進めることにより、これらの実験に係る試薬類、実験器具類のための支出を予定している。また、継続して北海道東部の野生二倍体集団の探索も行う予定であり、そのための旅費として経費支出を計画している。
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