2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of evaluation method for cuticular layer charactristics and control of cuticular layer injury.
Project/Area Number |
16K07592
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 克己 静岡大学, 農学部, 教授 (70370575)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | クチクラ / 表皮 / UV / トマト / 水疱症 |
Outline of Annual Research Achievements |
トマトの葉の水泡症は,葉の表面が隆起する生理障害で, UVカットフィルム下や人工光源下で発生する.電子顕微鏡を用いた観察により水疱症発生部位では表皮のクチクラ層が障害を受けていることを解明した。そこで、クチクラ層は染めず細胞壁を染めるトルイジンブルー水溶液を利用することで、水泡症部位を可視化し識別することが可能となった。水疱症発生程度をその染色面積率で評価できることを示した.水疱症は茎頂部位の葉原基や展開を終了した成熟葉では発生せず、葉面積を拡大している展開中の葉で発生することが明らかになった。発生要因としては、クチクラ層が発達しにくい高湿度条件やUVがカットされた条件で発生することが分かった。逆に、乾燥条件やUVがある条件では発生が見られず、この知見は水疱症発生抑制に寄与できる。12品種の水泡症発生状況を調査した結果,水泡症の発生程度には品種間があることが明らかになった。一方で夏季の裂果発生についても調査した結果、裂果の発生が多い品種では水疱症の発生が少なく、多い品種では少ない傾向が見られ、裂果の発生と水疱症の発生とは逆の相関がみられた。中玉品種では裂果の発生は見られなかったが、水疱症は発生し、大玉品種とは異なることが示された。今後、これらの品種のクチクラ組成について調査する必要がある。3年間の試験期間に加えて、1年間延長を行い、裂果、水疱症とクチクラ組成の関係性の解明と、結果をまとめて投稿論文を作成する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
水疱症の発生に関する基礎的知見の取得、水疱症の識別方法の確立、発生要因の特定、対策技術への応用など当初計画の大部分に関しては予定通り研究を進めることができたが、クチクラ層と裂果、水疱症の発生に関して、総括的なまとめができていないことや、結果をとりまとめ論文作成まで至っていないため、1年間の延長を申請したこともあり(3)やや遅れている、とした。まだやり残したことがあり研究を発展させるためにも延長して取り組むことにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
裂果、水疱症の発生程度が異なる各品種の果実と葉のクチクラ層を単離し、その量、ワックス、クチン、糖の比率について調査し、クチクラ層の組成と裂果、水疱症の発生との関連性を明らかにする。UVがない水疱症が発生しやすい条件と、UVがある正常な対照区において、クチクラ合成に関与する遺伝発現についてRT-PCR法を用いて明らかにし、UV、水疱症、クチクラ層の関連を解明する。以上の結果をまとめて投稿論文にする。
|
Causes of Carryover |
葉表面が隆起する水疱症がクチクラ障害であること、発生要因特定など、順調に研究を進めた。この障害について、細胞の隆起が先か、クチクラ層の異常が先か、その原因を解明するため、細胞肥大とクチクラ層合成に関する遺伝子発現を調査する必要がある。裂果との関連も明らかになりつつある。期間内にすべての実験を終え、論文化することが難しいため、延長して研究目的をより精緻に達成し、学会発表と論文投稿を行いたい。以上の研究延長を行うため、繰り越した次年度使用額を使用する。
|
Research Products
(1 results)