2016 Fiscal Year Research-status Report
トマトの夏期着色不良果の発生要因の解明とその対策技術の確立
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16K07593
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
切岩 祥和 静岡大学, 農学部, 准教授 (50303540)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トマト / 着色不良果 / カリウム / カロテノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
K施用量の異なる条件下(10me/株/週と30me/株/週)でトマトを栽培し、着色不良果を作出した。その結果、着色不良果の発生にカリウム処理が影響することが明らかとなった。また、着色不良果を発生する低カリウム濃度の処理期間は、開花後3週間を経過すると、その後にカリウム濃度を高めても着色不良果となってしまうことが明らかとなった。これら着色不良果実の着色程度の異なる果実の着色不良部を電子顕微鏡により形態観察を行ったところ、緑色、黄色、橙色の違いは、形態的な異常によるものではなく、クロモプラストへのカロテノイドの蓄積の違いによる可能性が確認された。 次に、トマトの着色不良果の発生要因を明らかにするために、フルーツディスクを利用した評価系について検討した。まず、温度の影響について検討したところ、35℃では着色が早く橙色となったが、さらに高い45℃処理では白色化し、全く着色しなかった。またカリウム溶液の処理は、K10に比べK30処理したディスクで着色がみられた。一方、ディスクにカリウムを与えなかった蒸留水での処理では、K10では緑色のままであったが、K30の果実は25℃に比べて30℃ほど着色した。このように、着色不良の要因を解明するために、カリウム処理や温度処理の影響等を評価する系として利用できる可能性が確認された。 さらに、カリウム濃度の異なる条件下で果実の色が異なる6品種を栽培し、着色不良果の発生について調査したところ、その発生状況は品種間で異なることも確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの調査により、トマトの着色不良果の発生を低濃度カリウム処理により安定的に発生させることができることが確認でき、いつでも本研究の材料を作出できることが確認できた。着色不良果の発生には環境要因も影響すると考えられているため、日射や気温の影響についても検討する必要があったが、温度については冬の栽培において加温システムを試作し、果実に対する温度処理の目途がたった。加えて、フルーツディスクを用いた着色評価系を順調に確立でき、しかもカリウム濃度の異なる材料間での違いが確認されたり、カリウムのスプレー処理の効果が確認され、カリウムとの関連を評価することができることも確認でき、発生要因を解明するための評価系として活用できるのではと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
カリウム施用の最適化が着色不良果の発生を軽減するために必要であるが、その効果には品種間差が考えられること、またカリウム施用濃度を高めた圃場においても、今なお着色不良果が発生していることが、現地調査を行った結果明らかとなっている。このように現場ではまだまだその発生を軽減するための対策を必要としているため、カリウムの施用と同時に効率的に吸収させ、果実に上手に移動させるための工夫をする必要があると考えている。この点についても再検証を加え、対策技術の確立を目指して研究を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
栽培システムのメンテナンスや栽培にかかる諸経費を物品費として見込んでいたが、従来のシステムを効果的に利用できたため、初年度経費を抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は解析等に使用する試薬等の消耗品の購入費を必要とするため、研究をさらにスピードアップできるよう計画的に執行していく予定である。
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