2018 Fiscal Year Research-status Report
栽培イチゴ花芽分化誘導ならびにランナー発生機構解明と超促成栽培法の確立
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16K07594
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松本 省吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90241489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田垣 駿吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (50597789)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 園芸学 / 野菜 / イチゴ / 花芽分化 / 促成栽培 / ランナー発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
栽培イチゴ苗‘とちおとめ’クラウン茎頂部より単離された花芽分化誘導候補遺伝子FaFT3を、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター制御下でシロイヌナズナに導入し、機能解析を行なった。T2世代でFaFT3の導入が確認された3系統11個体を得るとともに、導入が確認されなかった個体を分離WTとした。シロイヌナズナ(Col-0)野生型(WT)、分離WT 、FaFT3過剰発現体を長日条件で栽培し、抽苔時のロゼット葉の枚数を調べたところ、WT、分離WTではそれぞれ9.8±0.4、9.9±0.2であるのに対し、FaFT3過剰発現体3系統ではそれぞれ7.1±0.1、 6±0.0、 7.7±0.3であり、WTと比較してロゼット葉の枚数が有意に減少しており、早期開花性が見られた。また、形質転換処理個体から得られた分離WTと野生型(Col-0)との間にロゼット葉数に有意な違いがなかったことから、FaFT3過剰発現体の早期開花性は形質転換処理の影響によるものではなく、FaFT3の発現による影響であることが示された。以上より、FaFT3はシロイヌナズナにおいて花芽分化誘導機能をもつことが示された。また、前年度に引き続きFaFT3の発現解析を行い、クラウン茎頂の頂端部特異的に花芽分化と正の相関が見られることを確認した。さらに、前年度に行なった、クラウン茎頂の頂端部特異的に、栽培イチゴの花芽分化誘導時に発現変動する遺伝子群のトランスクリプトーム解析データを再解析し、花芽分化に関わる可能性のある新奇候補遺伝子群を特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、栽培イチゴ‘とちおとめ’より単離された花芽分化誘導(促進)遺伝子FaFT3の詳細な機能解析を行なった。その結果、FaFT3が花芽分化を促進することが確認された。また、これまでに栽培イチゴ‘とちおとめ’において花芽分化誘導(促進)遺伝子FaFT3の発現上昇と花芽分化抑制遺伝子FaTFL1-1の発現低下が栽培イチゴの花芽分化に重要であることを見出しており、両遺伝子のシロイヌナズナへの導入による機能解析実験から、前述のようにFaTFL3が花芽分化を促進し、FaTFL1-1は花芽分化を遅延させることを確認した。また、クラウン茎頂の頂端部をレーザーキャプチャーマイクロダイゼクション法により単離し、栽培イチゴの花芽分化誘導時に特異的に発現変動する遺伝子群のトランスクリプトーム解析を行った結果を再解析し、花芽分化に関わる可能性のある新奇候補遺伝子群の情報を得た。さらに、栽培イチゴ‘とちおとめ’で得られた結果が、他の栽培イチゴ‘紅ほっぺ’にも当てはまるかについても検討した。一方、ランナー形成への関与が示唆されるFaFT1については野生種のFvFT1とわずか1アミノ酸の違いにより花芽分化促進機能が失われており、両者の構造的な特徴について解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から、FaFT3とFaTFL1-1jは、それぞれ栽培イチゴにおける普遍的な花芽分化誘導(促進)因子と花芽分化抑制因子であることが示されつつある。また、栽培イチゴのクラウン組織を用いたトランスクリプトーム解析により、上記遺伝子群に加え花芽分化時に発現変動する遺伝子群の情報が得られた。今後は、これら遺伝子群を指標として花芽分化時期を特定し、超促成栽培技術へ応用することが求められる。特に、30日以上にわたる短日低温処理方法に加えて、15℃暗所と野外との移動を数日単位で数回繰り返す間欠冷蔵法へも応用することが求められる。さらには、FaFT3とFaFT1のイチゴにおける機能解析、すなわちFaFT3の開花誘導ならびにFaFT1のランナー発生への関与を明らかにする必要がある。
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Causes of Carryover |
本年度までの研究成果を取りまとめてより精緻なデータ解析を行なうための情報収集、ならびに、得られた成果を来年度の園芸学会などの関連学会にて発表するための旅費などを必要とするため。
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