2017 Fiscal Year Research-status Report
カンキツの倍加半数体を利用した雄性側自家不和合性の自己・非自己認識機構の解明
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16K07599
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
國武 久登 宮崎大学, 農学部, 教授 (80289628)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カンキツ / 半数体 / SSR / 単為発生 / 花粉 / 花粉DNA / 自家不和合性 / 雌性配偶子 |
Outline of Annual Research Achievements |
SSRマーカーによる単一花粉のSハイロタイプの決定するための基礎的研究を行った。材料には、‘晩白柚’ (Citrus maxima (Burm.)Merr.)および倍加半数体を供試した。花粉液体培養は内田ら(2012)の方法を使用し、マイクロピペットにより単一花粉を採取後、DNAを抽出し、第6連鎖群で3個、それ以外の連鎖群で5個のプライマーを使用し、Multiplex PCRを行った。また、それぞれの遺伝子座について1:1に分離するかをχ2検定によって検証した。 花粉の採取は花粉管が伸長した培養2時間後以降がよく、液体培地に少量の界面活性剤を加え、10µLショートチップを使用することで、効果的に花粉を採取することができた。次に、‘晩白柚’の花粉におけるSSR対立遺伝子の分離について調査したところ、第6連鎖群を含めて7個のプライマーにおいて有意水準5%で染色体モデルと同様の分離比を示すことが明らかになった。一方、倍加半数体の花粉は同対立遺伝子において片方にしか分離しなかった。以上のように、‘晩白柚’ および倍加半数体において単一花粉のSSRマーカーによる遺伝的分離の差異を証明することができた。 次に、自家不和合性の機序のひとつとして「多因子非自己認識モデル」が提唱されている(Kakuiら,2010)。そこで、ヒュウガナツ(S1S8)花粉におけるいくつかのSハプロタイプの花柱粗抽出物が花粉管破裂率に及ぼす影響について調査した。ヒュウガナツ(S1S8)が最も破裂率が高く(47.9%)、続いて土佐ブンタン(S3S1)、バンペイユ(S2S1)、シシユズ(S1S6)、ユゲヒョウカン(S6S7)、ハッサク(S4S5)、抽出液のみとなった。このことから、Sハプロタイプによって花粉管破裂率が異なることを観察することができ、ヒュウガナツにおいても複数の花粉側因子が機能していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SSRマーカーによる単一花粉の遺伝子座ごとのアリルを決定することができた。‘晩白柚’の花粉は解析したすべての遺伝子座において1:1に分離しており、BX1の倍加半数体は仮設通り、すべて同じアリルを示した。しかしながら、雌性配偶子由来半数体であり、独立した起源であるBX1~BX5の第6連鎖群の一部はすべて同じアリルであり、この領域に単為発生関連遺伝子が座乗している可能性が示唆された。これまでの予備的な研究では、BX1、BX2およびBX3の自家不和合性関連因子はすべてS1である(未発表)。昨年、Shimizuら(2017)はウンシュウミカン全ゲノムを解読し、これまでにブンタンおよびオレンジなどをはじめいくつかのゲノム情報が報告されていることから、これらを利用して、自家不和合性関連遺伝子の位置とその遺伝子型を特定していきたい。 また、S ハプロタイプが明らかとなった遺伝系統と花粉液体培養モデルシステムを利用して、花粉発芽・伸長について評価し、多因子非自己認識モデルの可能性を示唆した。今後、倍加半数体を利用してその可能性をさらに評価していく予定である。 以上のように、SSRマーカーによる単一花粉の遺伝子型を決めることができ、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
‘晩白柚’(S1S2)およびブンタン倍加半数体(S1S1)の単一花粉のSSR解析による遺伝子型の決定とアリルの分離については、平成30年度園芸学会秋季大会(於:鹿児島大学)において発表予定である。また、昨年度明らかにした‘晩白柚’(S1S2)の雌性配偶子から得られた5ブンタン半数体のSSR解析による遺伝子型の決定については、遺伝学関係の学術雑誌に投稿予定である。これまでに、我々の研究グループは、自家不和合性による花粉管伸長抑制にはプログラム細胞死(PCD)が関与していると考えており、カンキツでもいくつかの自家不和合性関連遺伝子の増減、ROS(活性酸素種)の変化、Ca2+増加、アクチン繊維の断片化が指標となっている(Li ら,2015a)。これまでの研究により、単一花粉の遺伝子型を特定することに成功しており、最終年度は、識別機構が明らかになった倍加半数体の成熟花粉の遺伝子発現等について調査する。
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Research Products
(3 results)