2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K07626
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
紙谷 聡志 九州大学, 農学研究院, 准教授 (80274520)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 単為生殖 / ヒメヨコバイ / ボルバキア |
Outline of Annual Research Achievements |
産雌性単為生殖を行うヨコバイ類に関して、とくに、九州大学に収蔵されている標本コレクションについて調査を行った。九州大学コレクションは日本で高く充実していることから、日本産種の状態を最もよく考察することができる。これまで、記載をすることを目的として収集されてきたことから、性比についての考察はほんどなされてこなかった。そこで、ヨコバイ科中もっとも多様であるヨコバイ亜科についてまず検討を行った。標本のメス比率が高い種の有無についてDeltocephaliniマダラヨコバイ族、Paralimniniヨシヨコバイ族およびAthysaniniヨコバイ族について検討を行った。この中でとくに、竹を寄主植物とする種が侵入昆虫であることを明らかにした。侵入経路の仮説として、セミやムネアカハラビロカマキリのように竹製品の組織中に産みこまれた卵に由来すると考えている。この場合、産雌性単為生殖を行う方が、侵入後の定着可能性が高いため、性比の調査を行った。その結果、本州および九州の5箇所の産地においてほぼ1:1の性比を示すことが明らかとなった。このことから、侵入性と性比との関連は低いものと考察された。 次に、沖縄本島で採集されるマダラヒメヨコバイの一種Diomma sp.について、その寄主植物であるウラジロエノキの苗木を、実験室内で栽培し、次年度に飼育実験を行う準備を行った。22本の苗を導入し、現在、19本が定着したため、次年度の飼育実験に十分な枚数の葉を供試できる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、1)ヨコバイ科の他種における単為生殖の可能性、2)共生細菌除去個体への再感染・近縁種への水平伝播、3)半翅目天敵への水平伝播の可能性の3点について明らかにする予定である。このうち、本年度は1に関して、日本産ヨコバイ科の中で最大の亜科であるヨコバイ亜科について性比異常種に産雌性単為生殖をしている可能性が見つからなかったため、マダラヒメヨコバイの一種Diomma sp.について、その寄主植物であるウラジロエノキの苗木を、実験室内で栽培し、飼育実験を行う準備を行った。また、10月に成虫の採集を沖縄本島中部~北部において試みたが、発生はみられなかった。このことから、周年発生しているのではなく、年1-2化の可能性が高いと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、沖縄本島においてマダラヒメヨコバイを採集し、実験室で栽培しているウラジロエノキを用い、個別飼育を行い、産雌性単為生殖の確認を行う。さらに、Wolbachiaのwsp遺伝子のPCRを用いてオカモトフタテンヒメヨコバイと同様の共生細菌相が感染しているかを明らかにする。そして、生殖操作を行うことが知られている昆虫の共生細菌であるArsenophorus, Cardinium, Flavobactteria, Rickettsia, Spiroplasmaの感染の有無も明らかにする。 次に、共生細菌除去個体への再感染・近縁種への水平伝播を確認するために、まず、オカモトフタテンヒメヨコバイおよび近縁種フタテンヒメヨコバイの大量飼育系の確立を行う。これまでの問題点であった餌の不足を解決するために圃場整備を行い、恒温条件下で多数の個体を個別飼育するための機器の追加が必要である。炭酸ガス麻酔を行った成虫腹部から細胞質を吸引し、テトラサイクリンを投与して共生細菌を除去した幼虫、羽化24時間以内の成虫に、共生細菌混濁液をマイクロインジェクションし、再感染を試みる。最も、再感染の効率が良い方法を明らかにする。そして、これらの検証後、半翅目天敵への水平伝播の可能性について、天敵カメムシ類へ共生細菌混濁液をマイクロインジェクションし、水平伝播を試みる。ヨコバイ科の他種における単為生殖の可能性として、ヒメヨコバイ亜科、オオヨコバイ亜科についても性比調査を行う。
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Causes of Carryover |
(当該助成金が生じた状況)寄主植物であるウラジロノエノキ苗木栽培環境の構築を優先したため、マダラヒメヨコバイの野外個体の採集ができなかった。このため、年度内に飼育実験を行う環境が整備できなかったため、次年度使用額が生じてしまった。 (使用計画)次年度4月にマダラヨコバイの採集を行い、栽培環境の整ったウラジロエノキを用い、個別飼育を行い、次年度使用額を使用する。
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