2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07627
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
藤 晋一 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (40315601)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 植物病理学 / ウイルス / 媒介昆虫 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. アザミウマのウイルス獲得、媒介時における利己的なウイルス選択と虫体内変異の可能性 オランダ(NL)型のCbAls株とブラジル(BR)型の大館株が単独感染したChenopodium quinoa葉上で2つのネギアザミウマ個体群(新潟個体群、秋田個体群)のふ化1齢幼虫に24時間ずつ順序を変えてウイルスを獲得させた。まず、いずれを効率的に獲得しているかを明らかにするため、供試アザミウマ中に存在するウイルスをImmunocapture(IC)- RT-PCR-RFLP法により同定した。その結果、新潟個体群でBR型、NL型の順で獲得させた場合と秋田個体群でNL型、BR型個体群の順で獲得させた場合では、極めて低い保毒率となった。一方で、新潟個体群でNL型、BR型の順で獲得させた場合は、BR型の保毒率が、NL型の保毒率よりも2倍近く高かった。秋田個体群でNL型、BR型の順で獲得させた場合は、BR型の獲得は認められなかった。上記試験では、SRNAとMRNAの遺伝子型が異なっているパターンや両方の遺伝子型が検出される場合も認められ、SRNAとMRNAが相同組み換えしたキメラ個体が発生する可能性が考えられた。しかしながら、インパチェンスへの媒介試験で感染したウイルスのなかにキメラは認められず、いずれの遺伝子型のみが媒介される結果となった。 2. ゲノム相同組み換え変異株の媒介能欠失の原因解明 オランダ(NL)型のCbAls株とブラジル(BR)型の大館株のヌクレオキャプシドタンパク遺伝子をRT-PCRで増幅後、35Sプロモーター直下に連結した発現ベクターを構築した。構築した遺伝子については、現在、ベンサミアーナタバコに加え、タバコ(品種:White Burley)に形質転換し、再分化個体の育成を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試験開始当初、研究室保有のウイルス株をChenopodium quinoaに接種し、病原性の確認を行ったところ、いくつかの株で病原性の失活、低下が起こっており、さらにアザミウマによる媒介効率が低下した株も存在した。そのため平成29年度以降の様々なウイルス株を用いた試験を順調に進めるために、平成28年度は、保存株の病原性、媒介効率の復帰と新たなウイルス株の入手と病原性の評価等研究体制の構築を併せて行った。また、平成29年度以降の実験に使用する組換え植物ついても、植物への遺伝子導入は終了しているが、実験に使用する種子はまだ得られていない。以上のことから、現在までの進捗状況の区分としては、やや遅れていると判断した。しかしながら、媒介虫体内では、2種類の遺伝子型がキメラで存在できるが、キメラ個体の媒介が認められないという、平成28年度の研究成果として予想された結果がほぼ得られている。したがって、平成29年度にこの結果を様々な実験系で検証することで、今後は計画通りに研究が進むものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね計画通りに研究を推進する予定であるが、昨年度の計画の遅れを取り戻す形でそれぞれの項目について以下の通り研究の推進を図る。 「1. アザミウマのウイルス獲得、媒介時における利己的なウイルス選択と虫体内変異の可能性」については、実験に供試する様々なウイルス分離株やアザミウマの確保がまだ不十分であることから、全国の公設試験場への分譲依頼や現地に赴いてウイルスとアザミウマの収集を行う。実験については現在保有しているウイルス分離株とアザミウマを用いて、計画通りに媒介実験を進め、随時、新たに入手したウイルス株とアザミウマを用いて、実験事例を積み重ね、ウイルス媒介への獲得吸汁順序の影響とキメラウイルスの発生の可能性について明らかにしていく。 「2. ゲノム相同組み換え変異株の媒介能欠失の原因解明」については、昨年度積み残した組換え植物が作出された段階で、速やかに組換えたタンパク質発現量等の評価を行う。その後は平成29年度の研究実施計画通りに、着せ替え粒子感染植物を使用した獲得・媒介実験を進めていく。 なお、得られた研究成果については、平成29年度に予定通り学会で発表することとする。
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Causes of Carryover |
平成28年度に本学バイオテクノロジーセンターに依頼して作出できる予定であった、組換え植物の作出が終了していない。次年度使用額が発生したのは、この作出に必要となる経費ならびに組換え植物のタンパク発現の解析に使用する予定であった経費が執行されなかったことにある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
組換え植物は、バイオテクノロジーセンターで順調に生育しており、平成29年度前半には作出が完成する予定である。また、作出された植物の解析もその後速やかに行う計画であり、次年度使用額となった分については、これに充当する計画である。
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