2017 Fiscal Year Research-status Report
土壌還元消毒に伴う酸化還元電位および一酸化二窒素発生予測モデルの開発
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16K07642
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
前田 守弘 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (00355546)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 一酸化二窒素 / 酸化還元 / 有機物 / 水移動 / 灌漑 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌還元消毒は化学物質を使わない防除技術として期待されている.しかし一方で,同消毒過程では酸化還元電位の低下に伴う一酸化二窒素(N2O)の多量発生を引き起こすことが懸念される.本研究では,N2O発生量を増加させない土壌還元消毒条件を検討するため,水・熱移動,有機物分解,酸化還元電位(Eh),N2O発生など一連のプロセスを観測に基づいてモデル化する. 2年目(平成29年度)は,土壌還元消毒を模した室内カラム実験を行い,土壌水分が変化する条件下で有機物の施用が土壌Ehの変化やN2O発生に及ぼす影響を調べた.土壌カラムに灰色低地土を充填し,50℃に設定した.表層10 cmにNO3-N(100 mg kg-1)とトウモロコシ(0.2%または無)を混合し,24時間で150 mmを灌漑した.その後,表面をマルチフィルム(塩ビ,0.05 mm)で被覆した.なお,Ehの計測には初年度に開発した塩橋法を採用した.有機物施用土壌の深さ10 cmのEhは2時間後に約-200 mVまで低下した.一方,無施用では終始150~300 mVと高く,硝化の痕跡が認められた.土壌表面N2Oフラックスは24時間までに第1ピーク,160時間後により大きな第2ピークがみられた.第1ピークは初期のEh低下と対応していることから脱窒由来と思われた.一方,第2ピークは深さ10 cmのEh が高く維持された有機物無施用でより大きかったことから,無機化に続く硝化由来と考えられる.以上より,N2O放出を抑制するのには有機物の施用条件を明らかにするとともに,硝化由来のN2O発生抑制技術の検討が必要であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度開発した酸化還元電位測定法を用いてカラム試験を行ったところ,硝化由来のN2O発生の寄与が大きいことが新たに発見されるなど,ほぼ予定通り研究が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,有機物の易分解性画分の評価方法を詳細に検討する.次いで,観測結果に基づいて,土壌の酸化還元電位およびN2O発生予測モデルを開発し,N2O発生量の少ない各処理条件を検討する. 1) 有機物の易分解特性評価法の検討 有機物として,コメヌカ,モミガラ,飼料用トウモロコシ,家畜ふん堆肥などを用いる.これらを土壌に施用し,分解産物である二酸化炭素(CO2)発生量およびN2O発生量を測定する.また,各有機物の易分解特性を測定し,CO2発生量と比較する. 2) 温度および材質がマルチ遮蔽性に及ぼす影響の評価 温度,マルチフィルムの材質および厚さがマルチのN2O遮蔽性に及ぼす影響を明らかにする. 3) 酸化還元電位およびN2O発生予測モデルの開発 土壌中で水・熱移動,有機物分解,酸化還元電位の推移などを解析するため,有限要素法などによるプログラミングを行う.
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Research Products
(3 results)