2016 Fiscal Year Research-status Report
ナトリウム施肥によるイネ生育促進機構に関する分子遺伝学的解析
Project/Area Number |
16K07643
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上田 晃弘 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (10578248)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ナトリウム施肥 / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
ナトリウムは土壌に高濃度に蓄積されると塩害を引き起こすが、適量であれば植物の生育を促進させうることが知られている。ナトリウム施肥による生育促進については、沿岸部に自生する塩生植物や一部のC4植物においての報告事例はあるものの、C3植物においては報告例が極めて少ない。また、ナトリウムによる植物の生育促進機構はいまだ不明な部分が多い。ナトリウムが持つ有用性についての解析を行うことを最終目的として、本年度は、少量のナトリウム施肥により生育が促進されるイネ品種の選抜を行った。来歴が異なるイネ175品種を用いてナトリウム施肥により生育が促進される品種の大規模選抜を水耕栽培により行った。その結果、低濃度のナトリウム施肥下で生育が促進される7品種を同定することができた。一方で、生育が抑制された品種も多く存在したことから、イネ体内におけるナトリウムの利用性には大きな品種間差があることが示唆された。選抜された品種群の来歴には顕著な特徴はなく、耐塩性品種のみならず塩感受性品種も含まれており、ナトリウムによる生育促進機構は耐塩性機構とは関連が無いことが示唆された。様々なナトリウム濃度下での生育促進品種の生育を調べたところ、高濃度になると生育が阻害されたことから、生育促進品種においても適度なナトリウム施肥が必要であることが分かった。促進されたイネ個体の生育について、根長の大きな変化は見られなったことから、ナトリウム施肥の効果は根量の増加にあることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究は順調に進展しているため、引き続き計画通りに研究を遂行する。
|
Strategy for Future Research Activity |
ナトリウム施肥が効果的なイネ品種の選抜を行った。次年度は、これらイネ品種が持つ生理学的特性(体内の元素分析等)を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
品種選抜が順調に進んだため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品費に充当する。
|