2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K07644
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
冨永 るみ 広島大学, 生物圏科学研究科, 講師 (20373334)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 根毛 / シロイヌナズナ / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の根毛は、根圏土壌との相互作用において重要な役割を果たす。本研究では、根毛形成を制御するMYB転写因子CPCファミリーの機能を解析し、根毛機能強化を目指した基礎研究を展開する。我々はこれまでにCPCの重要な機能として、細胞間移行すること等を明らかにしてきた。さらにCPCファミリーには、タンパク質分解が早いものとそうでないものがあることを見出した。そこでタンパク質分解に重要なアミノ酸モチーフの特定を試みた。また、リン酸欠乏応答による根毛増加へのCPCファミリー遺伝子の関与を検証し、根毛発生制御モデルの構築を検討している。また、これらの実験結果の栽培植物への応用を目指し、トマトのCPCオーソログの解析も進めている。 アミノ酸配列の比較により、シロイヌナズナのCPCファミリーのうちタンパク質分解が早いTRYとETC2は、他のホモログ(CPC, ETC1, CPL3)に比べて長いC末端配列を持つことがわかった。この長いC末端配列がタンパク質分解に関与しているかどうかを検証するために、TRY及びETC2のC末端配列を取り除いたDNAコンストラクト、あるいはCPCやETC1にこのC末端配列を付加したDNAコンストラクトを作製した。すでにCPC::TRYΔC:GFP, CPC::ETC2ΔC:GFP, CPC::CPC:CTRY:GFP, CPC::ETC1:CTRY:GFPのDNAコンストラクトを作製、シロイヌナズナに形質転換済みである。当初の予定どおり各10ラインのホモライン確立を目指し、根毛形成への影響及びGFP融合タンパク質の安定性の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CPCホモログのタンパク質分解は、ユビキチン化を経由したプロテアソーム分解によるものなのか、エンドサイトーシスやリソゾームでの分解によるものかを明らかにするために、様々な阻害剤を用いた実験を行った。これまでのところ、ERからゴルジ体への輸送阻害剤であるBFAやプロテアーゼ阻害剤であるE-64dによる阻害効果は見られず、ユビキチン・プロテアソーム系による分解の可能性が高いことが示唆された。しかし、GFP融合タンパク質を持つ形質転換体の蛍光局在観察では、今のところプロテアソーム阻害剤(MG132, MG115等)処理によるはっきりした実験結果は得られなかった。そこで、長時間プロテアソーム阻害剤処理した上記の植物体からタンパク質を抽出し、抗GFP抗体を用いたウエスタンブロッティングにより分解抑制の効果を確認した。 これまでに申請者らが単離したトマトのCPCオーソログSlTRYをシロイヌナズナに導入するとCPCと同様の機能を示す(Tominaga PLoS ONE 2013; Pant Signal. Behav.2013)。シロイヌナズナのゲノム上には現在7つのCPCホモログの存在が報告されているが、トマトには上記で単離したSlTRYのみしか見つかっていない。そこでトマトのCPCオーソログをさらに探索した。その結果、さらに別のトマトのCPCオーソログの存在を明らかにした。今後、この遺伝子についても解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナのCPCファミリータンパク質の分解機構については、引き続き解析を進める。また、分解機構に関与する、TRY及びETC2タンパク質のC末端アミノ酸のリン酸化の機構についても解析したいと考えている。 リン酸欠乏培地で育て、根毛数が増加したシロイヌナズナにおける、CPCファミリー(CPC, TRY, ETC1, ETC2, CPL3)および根毛形成制御関連遺伝子群(WER, GL3, EGL3, GL2等)の発現を、Real-Time PCRにより解析する。また、リン酸欠乏条件でのCPCファミリーpromoter::GUS発現(CPC::GUS, TRY::GUS, ETC1::GUS, ETC2::GUS, CPL3::GUS形質転換体は既に作出)を詳細に観察し、組織特異的な影響についても解析する。 cpc突然変異体あるいは過剰発現体(35S::CPC)のリン酸欠乏応答について、根毛形成関連遺伝子の発現、および根毛数の増減を中心とした表現型の変化を指標に解析し、CPCによる根毛形成機構がリン酸シグナルの下流に位置するものかどうかさらに確認する。 申請者らがCPCを過剰発現したトマト形質転換体を作出したところ、シロイヌナズナに見られたような根毛数の増加は観察されなかった(Tominaga PLoS ONE 2014; Pant Signal. Behav.2015)。シロイヌナズナの遺伝子は、トマトの根毛形成に関しては機能しない可能性がある。そこで、SlTRYおよび上記で単離したトマト新規遺伝子をトマト自身に形質転換し、実際にトマトではどのような機能を持つか明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究を進める上で、消耗品や試薬を大量に購入したが、調達の過程で節約に努めたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後さらに分子生物学的解析のための消耗品が必要だと予想される。また、いくつかの論文投稿を準備中のため、これらが受理された際にはさらに投稿料等が必要になる。これらの費用としての次年度使用額の使用を計画している。
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