2016 Fiscal Year Research-status Report
植物保護細菌の抗菌物質生産を制御する複雑な細胞間コミュニケーション機構の解明
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16K07656
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
諸星 知広 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90361360)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クオラムセンシング / アシル化ホモセリンラクトン / フェナジン / 抗菌物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌や根圏には高密度のPseudomonas属細菌が生息し、植物病原菌に対する様々な抗菌物質を生産することが知られている。抗菌物質の一つであるフェナジン-1-カルボン酸(PCA)は、様々な植物病原菌に対して優れた増殖阻害効果を示すことから、PCA生産性Pseudomonas属細菌は微生物農薬としての利用が期待されている。本研究で使用したPseudomonas chlororaphis subsp. aurantiaca StFRB508株は、複数のアシル化ホモセリンラクトン(AHL)を介した細胞間情報伝達機構Quorum Sensingにより、PCA生産を制御する複雑な機構が存在することが報告されている。本年度は、StFRB508株のゲノム情報を明らかにするとともに、クオラムセンシング制御系遺伝子によるPCA生産制御を明らかにすることを目的とした。次世代シークエンサーを用いて取得したStFRB508株の全ゲノムを解析したところ、AHL合成遺伝子とAHLレセプター遺伝子の組からなるQuorum Sensing制御系が3組(phzI/phzR, aurI/aurR, csaI/csaR)存在することが明らかになった。また、これらの遺伝子を複数の組み合わせで破壊した多重破壊株を作製したところ、AHLレセプター遺伝子の中でもphzRのみを破壊することでPCA生産が完全に消失した。また、AHL合成遺伝子に関しては、phzIを破壊するとPCA生産は大幅に減少したが、aurI及びcsaIの破壊ではPCA生産にほとんど影響は現れなかった。また、すべてのAHL合成遺伝子を破壊すると、PCA生産が完全に消失したことから、これらの3種類のAHL合成遺伝子により生産されたすべてのAHLがPCA生産制御に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度計画書に記載した平成28年度の実験計画に従って順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
年度計画に従い、StFRB508株のクオラムセンシング制御機構について、作製した多重破壊株を用いてより詳細に解析を行う。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに経費の執行を終えたが、わずかな端数が残ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は非常にわずかであるため、平成29年度予算額と合わせて計画的に執行を行うことで、問題なく研究計画が進行できるものと考えている。
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