2017 Fiscal Year Research-status Report
好熱性真菌における高安定性,高活性,広基質特異性D-アミノ酸酸化酵素の探索と解析
Project/Area Number |
16K07660
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
高橋 祥司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (90324011)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 好熱性真菌 / Rasamsonia emersonii / D-アミノ酸オキシダーゼ / 大腸菌発現 / 精製 / 高安定性 / 広基質特異性 / 高活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
D-アミノ酸化酵素(DAO)は,抗生物質合成中間体7-アミノセファロスポラン酸の生産,D-アミノ酸の検出・定量,アミノ酸ラセミ体の光学分割や医薬品原料となるケト酸や非天然L-アミノ酸の生産など,工業的に有用な酵素である.そこで本研究は,高い安定性を有し,高活性で多様な基質に作用するDAOを世界に先駆けて見いだし,その応用的利用へ展開するための基盤を築くことを目的とした. 研究計画では,(1)広基質特異性DAOを有する好熱性真菌の単離とDAOホモログ遺伝子の単離,(2)DAOホモログ遺伝子の大腸菌発現系の構築,選抜と発現産物の酵素学的諸特性解析の達成を目指している.現在までに,D-アミノ酸資化能を有する好熱性真菌を複数単離し,その一つであるRasamsonia emersonii YA株にDAOホモログ遺伝子(ReDAO)を見いだし,その大腸菌発現ベクターを作成している.そこで今年度は,大腸菌で発現させたReDAO遺伝子発現産物を精製して,その酵素学的諸特性を解析した. ReDAO遺伝子を大腸菌で発現させ,発現産物を単一に精製した.ReDAOの至適温度とpHはそれぞれ55°Cと8.0であった.ReDAOのT50値(活性の半分が失活する温度)は60°Cであり,工業的に有用な酵母Trigonopsis variabilis DAO(TvDAO)や酵母Rhodotorula gracilis DAO(RgDAO)のT50値よりも高かった.ReDAOは基質特異性の広いRgDAOよりも多様なD-アミノ酸に対して高い活性を示した.さらに,TvDAOとRgDAOを除く既知のDAOがほとんど活性を示さないセファロスポリンCに対しても,ReDAOは高い活性を示した.以上の結果より,ReDAOが高安定性,高活性,広基質特異性DAOであることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は,高い安定性を有し,高活性で多様な基質に作用する工業的に有用なDAOを世界に先駆けて見いだすことを目指している.今年度は主として,前年度の本研究において見いだしたRasamsonia emersonii YA株のDAOホモログ遺伝子(ReDAO)の大腸菌における発現,発現産物の精製と特徴解析を検討した.検討の結果,ReDAOは高い触媒活性を有する常温性真菌DAOと同等の高い活性を有すること,多様なD-アミノ酸のみならずセファロスポリンCや酸性D-アミノ酸にも高い活性を示す広基質特異性を有すること,さらに真菌DAOの中で最も高い熱安定性を有することを明らかにし,ReDAOが目的とする高安定性,高活性,広基質特異性DAOであることを明らかにした.以上の理由より,本研究は予想以上に順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は予想以上に順調に進展していることから,今後はReDAOの特徴をさらに詳細に解析することを目標とし,以下の項目について検討する予定である. (1)広基質特異性に関わる構造因子の解明:ReDAOと他の生物種由来DAOの一次構造配列および結晶構造もしくは三次元構造モデルとの比較から,ReDAOの広基質特異性に関わると考えられるアミノ酸残基を見いだしている.従って,これらアミノ酸残基の部位特異的変異導入によりその基質特異性への関与を明らかにする.(2)高安定性に関わる構造因子の解明:ReDAOと他の生物種由来DAOの一次構造配列および結晶構造もしくは三次元構造モデルとの比較から,ReDAOの高安定性に関わるアミノ酸残基を見いだしている.従って,これらアミノ酸残基の部位特異的変異導入によりその安定性への関与を明らかにする.(3)結晶構造の解明:ReDAOの結晶構造を明らかにすることで,広基質特異性及び高安定性に関わる構造因子を正確に推定する.
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Causes of Carryover |
(理由)計画では,目的とする高安定性,高活性,広基質特異性DAOを見いだすために,多数の好熱性真菌DAOホモログ遺伝子を合成し,大腸菌で発現させる必要があると考えていた.しかし,早々に単離したR. emersonii YA株に見いだされたDAO(ReDAO)が目的のDAOであることが明らかとなり,複数の好熱性真菌DAOホモログ遺伝子の大腸菌における発現産物の解析をする必要がなくなったことが,次年度使用額が生じた主な理由である. (使用計画)現在,本研究は予想以上に順調に進展している.そこで,本研究で見いだした高安定性,高活性,広基質特異性ReDAOの「基質特異性メカニズムの解析」,「高耐熱性メカニズムの解析」,「結晶構造の解析」の解析を進める予定であり,主にDNA変異実験,塩基配列解析,酵素の精製や特性解析に必要とされる試薬や器具などの消耗品を購入する計画である.また,本研究で得られた研究成果を積極的に発表するための論文投稿に関わる費用や旅費にも支出する計画である.
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