2016 Fiscal Year Research-status Report
原核細胞の細胞骨格による磁気感知オルガネラ配置の分子機構
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16K07661
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田岡 東 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (20401888)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞骨格 / 細菌 / オルガネラ / 磁気感知 / アクチン / 生細胞イメージング / 高速原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、磁性細菌の細胞内で、MamK 細胞骨格がどのようにしてマグネトソームの配置を制御し、磁気センサーとしての役割を支えているか、を明らかにする。 1、MamK 精製と高速AFMによる重合特性の解析 in vitroでMamK蛋白質の重合特性を解析するため、単量体MamKを精製した。大腸菌で発現させたMamK蛋白質を、弱アルカリ性の脱重合緩衝液に懸濁し、MamKを脱重合させた。得られた試料をイオン交換カラムクロマトグラフィ、ゲルろ過を行うことで単量体MamKを精製した。高速AFMを用いて、MamK繊維の重合過程を観察したところ、MamK繊維の重合に極性があること、MamK繊維がトレッドミル運動することを明らかにした。MamK繊維のトレッドミル運動がマグネトソームの安定な細胞内配置に必要であることを示唆した。 2、生細胞内のマグネトソームとMamK細胞骨格の動態観察 全反射蛍光顕微鏡を用いて、磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB-1の細胞周期全体にわたるマグネトソームの細胞内動態を、高い時間分解能で観察することに成功した。野生株とmamK遺伝子欠損株のマグネトソームの局在と動態を比較すると、野生株では、マグネトソームは細胞中央に直鎖状に細胞周期を通じて固定されていたのに対し、mamK欠損株では、マグネトソームは凝集体をつくり細胞内の偏った位置に存在するか、ランダムに分散し移動する様子が観察された。また、mamK欠損株細胞内のマグネトソームの拡散定数は、リボソームなどの細胞内を単純拡散する分子と同等であった。このことから、MamK細胞骨格は、マグネトソームを細胞中央に直鎖状につなぎとめることで、マグネトソームが細胞内に動的に分散することを防ぎ、安定な構造をもつ効率的な磁気センサーとして機能させていることが明らかになった(論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、高速AFMと全反射蛍光顕微鏡による生細胞蛍光イメージングを、それぞれin vitro とin vivo からのアプローチとして用い、MamK 細胞骨格がどのようにマグネトソームを形成し、磁気センサーとしての役割を支えているか、を明らかにする。 平成28年度に計画した、単量体MamK蛋白質の精製、MamJ蛋白質の精製を達成し、さらに高速AFMによりMamK分子が繊維状構造に重合する様子を動画観察することに成功した。また、全反射蛍光顕微鏡を用いた生細胞内のマグネトソーム動態観察により、MamK 細胞骨格のマグネトソーム細胞内配置における機能についての基礎情報を得ることに成功した。以上のように本研究課題は、研究計画に従い順調に進展しており(2)を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通りに研究が推進しているため、来年度も当初の研究計画に従い研究を実施する。平成29年度は、変異型MamK蛋白質の生化学的性質を高速AFMによる重合特性解析により、細胞生物学的性質をマグネトソームの生細胞蛍光イメージングにより解析し、MamK細胞骨格蛋白質がマグネトソームを安定な直鎖状構造に配置する分子機構の解明を目指す。 Magnetic swimming assay を用いた変異型MamK のスクリーニングを行い、走磁性が回復しない変異型MamKを単離することで、MamK蛋白質中のマグネトソーム配置に重要なアミノ酸残基を同定する。同定したアミノ酸残基に変異を導入した変異型MamK蛋白質を、今年度に確立した方法で精製し、高速AFMで重合特性を調べる。また、得られた変異型MamK蛋白質をmamK遺伝子欠損株に発現させ、マグネトソーム配置への影響を生細胞蛍光イメージングで観察する。変異型蛋白質のスクリーニングが困難な場合は、ATP 結合部位やモノマー間結合部位などアクチンファミリーに保存的なアミノ酸残基の変異型蛋白質を作製し解析を行う。
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