2018 Fiscal Year Research-status Report
硫黄等の栄養枯渇が引き起こす寿命延長メカニズムの解析-リボソームに焦点をあてて-
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16K07662
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大塚 北斗 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (10632151)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Ecl1 family遺伝子 / ecl1 / 分裂酵母 / 経時寿命 / リボソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、「栄養枯渇がリボソームの量または機能の抑制をもたらし、この抑制が分裂酵母の寿命延長を起こす」と仮説を立て、その解析を行った。 本研究計画では、カロリー制限などの栄養枯渇による寿命延長はリボソームの量またはその機能の低下に起因するのではないかと予想し、この仮説の検証を行うとともに、これを応用することで酵母細胞の寿命の制御を試みることを予定していた。平成30年度は、新たな共同研究者との連携が可能となり、予備的な実験結果ではあるが、いくつか新規な結果を得ることができた。具体的には以下の2つになる。 1. 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の桑田先生と共同研究が始まり、硫黄枯渇下での細胞の生存に極めて重要な因子、Ecl1の物理相互作用因子の候補を複数得ることができた。2.立教大学の赤沼先生と共同研究が始まり、硫黄枯渇下のリボソームの状態を、ポリソーム解析を通して観察することが可能となった。 現在は、1.によって得られた候補のうち、Ecl1の分子機構解明に迫れる可能性が高い物理相互作用因子の同定を行っている。2.では、硫黄枯渇下で翻訳活性の低下がEcl1 family遺伝子依存的に起こりうる予備的データを得られたことから、この再現性の取得を現在目指している。 さらには、平成29年度に進行中であった細胞形態の観察から、Ecl1と細胞周期の関わりが明らかになりつつある。このテーマに関しても引き続き解析を続けていく。また、栄養枯渇として、硫黄だけでなく、ロイシン要求性変異株においてはロイシンの枯渇も硫黄枯渇と同様の仕組みで寿命制御が行われている可能性を示すデータが取得されつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定にはない、2名の研究者との共同研究を始めたことにより、計画の遅延は見られたが、より深い解析が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の桑田先生と共同研究により、酵母の解糖系での複数の酵素とEcl1タンパク質の相互作用が確認できた。これを確固たる証拠とするため、これら因子との相互作用を、質量分析器を用いた解析のみではなく、酵母two-hybrid法による解析にて確認をとる。また、実際にEcl1がこれら酵素に結合してどのような働きをしているのかを確かめるため、これら酵素とEcl1を精製し、Ecl1の有無によってこれら解糖系の酵素の活性にどのような変化があるのかを調べる。 2.ポリソーム解析により、Ecl1 family遺伝子依存的に硫黄枯渇下で翻訳活性の低下が見られることが分かりつつある。この制御がいかにして行われているのか、より詳細に解析したいと考えている。具体的には、現在Ecl1には複数の翻訳後修飾が起こることが分かりつつあるが、どのような修飾がこの現象に影響を与えるか否かを調べたい。 さらに、昨年度からの解析途中であるのが、Ecl1遺伝子と細胞形態、細胞周期との関わりである。予備的結果でEcl1がサイクリンの存在量に影響を与える可能性が提示された。本年度はこの具体的な制御機構を明らかにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していなかったが、研究遂行中に名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の桑田先生と知り合い、協力を得られることになった。これより、Ecl1 familyタンパク質の質量分析器を用いた網羅的解析が可能となった。 さらに、立教大学理学部生命理学科の赤沼先生と知り合い、協力を得られることになった。これより、リボソームのより詳細な解析が可能となった。 これらを踏まえ、より精緻に研究を達成するため研究計画の変更が求められた。
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