2016 Fiscal Year Research-status Report
粘液細菌における新規シグナル物質ジアデノシンポリリン酸の機能解明
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16K07667
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
木村 義雄 香川大学, 農学部, 教授 (10243750)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジアデノシンポリリン酸 / 粘液細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
粘液細菌において様々なストレス条件下におけるdiadenosine polyphosphate (ApnA)の細胞内濃度を定量した結果、高温、浸透圧、酸化及び飢餓ストレス条件下などでストレス負荷後、8-16時間の間に数倍から5倍程度のAp4AとAp5Aの増加が見られ、その後、徐々に減少していった。その時のAp4A濃度は、Ap5Aに比べ、数-5倍程度高かった。ApnA分解酵素であるApaHをコードする遺伝子を破壊したapaH変異株は、野生株に比べ、5-10倍程度高い細胞内ApnA濃度を示した。apaH変異株では、飢餓誘導による胞子形成が野生株より遅くなり、5日目で野生株の5%程度の胞子数しかなく、高い細胞内ApnA濃度は胞子形成を阻害することが示唆された。 一方、種々のストレス条件下ではApnA分解活性が1.5-2倍程度増加したことから、粘液細菌では増加したApnA濃度を分解酵素を用いて低下させていることが推定された。apaH変異株は、ApnA分解活性が野生株に比べ、30-40%程度見られたことから、本菌ではNudix hydrolaseなどによってもApnAが分解されていることが示唆された。 本菌ではApnAを合成する酵素としてlysyl-tRNA synthetase (LysS) を有し、本酵素は既に報告されている酵素と違い、Znで活性化されず、むしろ強い阻害が見られた。本酵素の諸性質を明らかにするため、ATPのほか、ADP、3リン酸、Ap4などの基質のKm値、Vmax値などを測定した。また、本酵素はATPとAp4あるいはAp4単独で基質とした場合、Ap5A、Ap5、Ap6Aの合成が見られたことから、中間体してlysyl-ADPが形成されていることが推定され、このような中間体を形成する初めての報告例となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに粘液細菌における野生株及びApnA分解酵素であるApaHの遺伝子欠損株(apaH変異株)を用いて種々のストレス条件下での細胞内diadenosine polyphosphate (ApnA)濃度の測定及び野生株とapaH変異株との表現型の違いを明らかにしている。また、その時のApnA分解活性の測定を行い、ApnAの増減に分解酵素がどのように関わっているかを明らかにした。これらの結果についてはMicrobiology に報告を行った。 また、ApnAの主要合成酵素と考えられるlysyl-tRNA synthetase (LysS)の諸性質を検討した結果、この酵素はATPとAp4あるいはAp4単独でAp5A, Ap6A及びAp5を合成したことから、中間体としてlysyl-ADPが生成されることが推定された。中間体(活性化)としてATPから基質にAMPが結合することはよく知られている反応系であるが、基質にADPが結合するという報告例はなく、Archieves of Biochemistry and Biophysicsに初めての例として報告を行った。 本年度に2報の論文に報告しており、また、上記以外の結果も得られており、現在、これらの結果をもとに論文を作成中であるため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
tRNAにアミノ酸を結合させるaminoacyl-tRNA synthetaseがApnAを合成する主要酵素と考えられている。我々は既にlysyl-tRNA synthetase (LysS) が高いApnA合成活性を有し、既に報告されている酵素とは異なる特徴を有することを明らかにしている。そこでLysS以外のaminoacyl-tRNA synthetase酵素においてApnA合成活性を有する酵素が存在するかどうかを検討する。高いApnA合成活性を有する酵素を見いだすことができれば、その酵素の諸性質を明らかにする。 また、aminoacyl-tRNA synthetase以外にもacyl-CoA synthetase, acetyl-CoA synthetase, adenylate kinaseなどでもApnAあるいはAp5A合成の基質となるAp4が作られることが報告されていることから、粘液細菌が有するこれらの酵素を大腸菌で発現させ、酵素活性の測定を行うことでこれらの酵素がApnA及びAp4を生成するかどうかを調べる。 さらにApnA分解酵素として、細菌特有のApaHと生物全般に見られるNudix hydrolaseがあり、ApaHについては研究が終わっているので、本菌が有する12のNudix hydrolaseを大腸菌で発現及び精製した酵素を用いて基質特異性を測定し、ApnAの分解活性を有するNudix hydrolaseを明らかしていくとともに、それらの酵素の諸性質を明らかにする予定である。また、高いApnA分解活性を有するNudix hydrolaseの遺伝子破壊株を作製し、野生株との表現型を比較することで、粘液細菌における本酵素の役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度の配分額は180万円と次年度以降の100万円より80万円多かったため、次年度以降の研究を円滑に遂行するために全額使用せず、次年度に配分額の一部を繰越した。また、購入予定の機器を退職予定教員より、譲渡していただいたため、購入しなくてすんだので、使用額が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
多くは消耗品である試薬の購入に充てる。また、一部は冷凍庫、冷蔵庫の購入に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)