2017 Fiscal Year Research-status Report
粘液細菌における新規シグナル物質ジアデノシンポリリン酸の機能解明
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16K07667
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
木村 義雄 香川大学, 農学部, 教授 (10243750)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジアデノシンポリリン酸 / 粘液細菌 / アミノアシルtRNA合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
粘液細菌は、高温、浸透圧、酸化及び飢餓ストレス時などで細胞内のジアデノシンポリリン酸(ApnA)濃度を上昇させることを見出しており、本年度はApnA合成に関与する酵素の特定を行った。 ApnA合成酵素として、アミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)が知られており、tRNA非存在下でアミノ酸とATPから合成される。我々は既にlysyl-tRNA合成酵素(LysS)は高いAp4A、Ap5A合成活性を有することを報告しているので、それ以外のaaRS19種を大腸菌で発現を試み、このうち15種は大腸菌で発現できたので、酵素活性を測定したところ、LysSが他の酵素より約10倍以上高いAp4A合成活性を有していた。ただし、他の生物で高い活性を有するphenyl-tRNA合成酵素はリコンビナントの2つのサブユニットがうまく複合体を形成しなかった可能性がある。活性の低いaaRSはピロホスファターゼ存在下で高いADP合成活性を示したことから、これらのaaRSは1段階目の反応(アミノアシルAMPの形成)で生じた2リン酸が分解されて生じた1リン酸を用いて、2段階目の反応ではLysSと異なりATPよりも1リン酸を基質として好むことが明らかになった。また、基質としてATPと3リン酸を用いるとseryl-tRNA合成酵素において高いAp4合成活性が見られた。 一方、アシルCoA、アセチルCoA合成酵素においてもApnAの合成が報告されているため、大腸菌で発現させた酵素を用いて活性測定を行ったが、低い活性しか見られなかった。一方、ホスホグリセリン酸キナーゼは3リン酸なしでも、ATPと3-ホスホグリセリン酸からAp4が合成されたことから、細胞内ではこの酵素によってAp4が合成されていると考えられ、この酵素より生成されたAp4を基質としてLysSがAp5AやAp6Aを合成すると考えれらた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸菌にて、アミノアシルtRNA合成酵素15種、アセチルCoA、アシルCoA合成酵素をそれぞれ3種と4種及びホスホグリセリン酸キナーゼとアデニル酸キナーゼを1種ずつ大腸菌で発現させ、それらの酵素活性を測定することで、粘液細菌におけるAp4A及びAp4の主要合成酵素について明らかにすることができた。細菌においてこれらの酵素を網羅的に活性測定を行っている報告例はなく、新しい知見を与えることができたと考えている。 本年度中に本研究に関する論文を2報、また、一部、本課題に関連する論文を1報報告できたので、昨年度とあわせて計5報の論文にて本研究課題の結果について報告している。また、現在、論文を執筆中のものもあるので、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
粘液細菌におけるAp4A、Ap5A及びAp4の主要合成酵素とその酵素的諸性質については明らかにすることができたので、今後はAp4A、Ap5Aを分解する酵素の特定とそれらの酵素学的諸性質についての知見を得たい。最後に細菌の種々のストレス時に合成されるAp4AやAp5Aが、どのような役割を有しているのかを明らかにすることを今後の目的とする。 そのため、Ap4A、Ap5A分解酵素については、全ての生物が有しているNudix hydrolaseについて研究を進めていく。生物は本酵素を10種以上有しており、粘液細菌も12種の本酵素を有している。これらの酵素のうち、どの酵素によってAp4A、Ap5Aが分解されているのかを明らかにするとともに酵素学的諸性質を検討する。 また、Ap4A、Ap5Aに関してはATPと類似した構造を持つのでATPやADP、AMPなどを基質とする酵素において、Ap4A、Ap5Aが活性に影響を与えるかどうかを中心に実験を進める。活性に影響を受ける酵素が特定されれば、それらの酵素の役割や変異株の表現型から、Ap4A、Ap5Aがどのような機能を有しているかを推定していく。
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Causes of Carryover |
購入予定の機器(マイクロプレートリーダー、冷却器など90万円相当)を退職教員より、譲渡していただいたため、購入しなくて済んだので使用額が少なくなり、また、最終年度に備品機器を購入するため、本年度での使用を見送った。 主に本研究課題の研究を遂行するにあたり、使用頻度の高い超低温フリーザー、オートクレーブ、保冷庫などの備品購入と試薬などの消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)