2018 Fiscal Year Research-status Report
Geobacter属細菌の細胞外電子伝達ネットワークの解明
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16K07671
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
井上 謙吾 宮崎大学, 農学部, 准教授 (70581304)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鉄還元菌 / Geobacter / 細胞外電子伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄還元菌・発電菌として代表的なGeobacter sulfurreducensの標準株PCA株は細胞外電子伝達には複数種のc型シトクロムを利用する。本研究では、それらc型シトクロム同士の相互作用について詳細を明らかにすることを目的とする。<共免疫沈殿法によるシトクロムの相互作用解析> OmcZSを抗原として作製された抗OmcZ抗体を用いて共免疫沈殿を行った。OmcZと相互作用する可能性のあるタンパク質を取得することに成功し、SDS-PAGEに供したところ、複数のバンドが見られた。バンドをゲルから切り出し、OmcZと相互作用すると考えられたタンパク質について同定を試みたが、得られたタンパク質量が少なく、同定には至らなかったため、同様の実験系にて、OmcZと相互作用するタンパク質の大量調整を試みている。<OmcZLの精製と結晶化> 微生物燃料電池で高い出力での発電に必須なOmcZは、ペリプラズムでは水溶性の高い50 kDaのシトクロムOmcZLとして存在するが、その後、プロテアーゼによる切断を受けて30 kDaの水溶性の低いOmcZSになる。C末端に6個のヒスチジンを付加したOmcZL全長を生産するG. sulfurreducensを作製し、精製OmcZLの大量調整した。精製OmcZLを用いて結晶化条件を検討したところ、10を越える条件で良好な結晶を得ることに成功した。X線回折データの取得を試み、最大1.0Åの分解能の反射データを得ることに成功したが、対称性の最も低い空間群であったため、異なる条件で得られた結晶について反射データ収集を試みたところ、3.4Å程度ではあったものの、より対称性が高い空間群での反射データを得ることができた。現在構造を明らかにするために反射データを解析中であり、さらに良好なデータを得るために他の結晶化条件についても検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共免疫沈降法によるOmcZと相互作用するタンパク質については、OmcZと相互作用する可能性の高いタンパク質がSDS-PAGEのバンドとして確認できているものの、得られているタンパク質量や質の問題により同定には至っていない。用いるサンプル量を増やすなどの対策を行ったが、SDS-PAGEのバンドの切り出しと精製によって調整したサンプルではMALDI-TOF/MSによる良好な結果が得られるに十分な量を取えることができていない。 OmcZの結晶構造解析では、結晶化に成功し、反射データの取得に至ったものの構造決定には至っておらず、今後さらに良好な反射データの取得と解析が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
OmcZと相互作用するタンパク質の解析においては、これまで試みてきた実験系の単純な拡張では目的のタンパク質の同定は困難であることが考えられたため、今後はLC-MS/MSとそれに続くMascotサーチによる網羅的なタンパク質同定を試みるなど、方策の転換が必要と考えられる。同定されたタンパク質については、その遺伝子破壊株の作製と表現型解析(OmcZの生産や微生物燃料電池での発電能力など)を行うことで、細胞外電子伝達ネットワークに関与するあらたな因子を明らかにできると考えられる。 OmcZの立体構造については、X線回折データ取得可能な結晶が得られる結晶化条件が明らかになっており、今後はさらに良好の結晶を得るために若干の沈殿剤濃度、塩濃度、pHに変化を加えた条件や微量のadditiveを添加した条件での結晶化を試みることで、より良好なX線回折データの回収を試みる。OmcZの立体構造が明らかになれば、c型ヘムの結合位置やそれぞれの分子表面からの距離などから、分子内の電子移動経路を推定することが可能になる。また、最も外側に位置するヘム周辺の分子表面の性質から電極(疎水性)と相互作用する可能性の高いアミノ酸に変異を導入するなど、変異酵素を作製し、その電極への電子伝達能力などについて解析することで、電極と相互作用するアミノ酸やタンパク質の立体的特徴などを明らかにすることができると考えられる。
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Causes of Carryover |
外注による解析(RNA-Sequencing)において、外注先でのサンプルの取り違えが生じたため、納期が年度内に間に合わない可能性があったため、補助事業期間延長の手続きを行ったうえで、次年度使用額として算出した。
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