2016 Fiscal Year Research-status Report
単細胞性真核紅藻における複製開始点の同定とそれを利用した人工染色体の構築
Project/Area Number |
16K07675
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
渡辺 智 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (10508237)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 微生物ゲノム / DNA複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、単細胞性の真核藻類は有用物質生産のホストとして期待が高まっている。中でも原始的な細胞構造、ゲノムを有し極限環境に生息する単細胞性真核紅藻Cyanidioschyzon merolae (以下シゾンと呼ぶ)は物質生産のホストとしても高いポテンシャルを秘めている。シゾンは遺伝子ターゲティングが可能な唯一の藻類であるが、遺伝子発現系を安定に保持させることが困難であり、現状では複雑な遺伝子改変は不可能である。本研究では藻類細胞において安定的に保持される新規ベクター系の開発を目的とし、[計画1]シゾン複製開始点の同定と、これを用いた[計画2]シゾン人工染色体の構築を進めている。 まずこれまでに樹立したチミジンキナーゼ 発現株(TK株)を用いて、DNAが新規合成された領域について次世代シーケンシング(Repli-seq)を実施した。しかしコントロールと比較して有意と判断される領域の同定には至らなかった。別の研究グループの解析よりTK株はオルガネラに比べて核へのBrdUの取り込み頻度が低いことが新たに示されたため、TK株を用いた次世代シーケンス解析は中止することとした。別のアプローチとして、複製起点結合因子の一つであるORC2タンパク質に着目し研究を進めた。内在性のプロモーターよりHAタグと融合したORC2(ORC2-HA)を発現する株の樹立に成功した。細胞周期の各フェーズにおけるORC2-HA発現をウェスタン解析によって確認した結果、本来の分子量のシグナルに加え、より大きなサイズからも特異的なシグナルが検出された。大きなサイズのタンパク質量はS期、G2/M期にむけて徐々に減少し、逆に本来のサイズのORC2-HAのシグナルはG1期からS期にかけて増加した。これらの結果からORC2はシゾン細胞周期においてタンパク質のレベルで制御されることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に反してTK株を用いたRepli-seq解析については方針を転換すべきことがわかったが、一方で複製開始因子の一つであるORC2株の形質転換体の作出に成功し、新たな知見が得られた。今後、本株を用いてChIP-seqを行うことにより、さらなる研究の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はORC2-HAの発現株を用いてChIP-seq解析を行い、ORC2が特異的に結合する領域を明らかにする。またORC1タンパク質においても同様の株を作製し、複製開始因子の結合領域について、さらに情報を集める。収集された情報をもとに人工染色体構築に向けたベクター構築を開始する。セントロメア領域を含むベクターを新規に構築し、これに複製開始点の候補領域をクローニングする。得られたベクターをシゾン細胞へと導入して、複製の活性を比較する。
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Causes of Carryover |
平成28年度にペプチド抗体の作製を依頼しており納期が遅れため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し分の費用は平成29年度に支出することとした。
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Research Products
(2 results)