2016 Fiscal Year Research-status Report
バクテリアの多様な光応答を支える光スイッチ群に関する研究
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16K07676
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高野 英晃 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (50385994)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光センサー / 非光合成細菌 / LitRファミリー / カロテノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
LitRファミリーの光受容体としての機能解明を主な目的として遺伝生化学的な解析を実施した。変異蛋白質を用いた解析により、Class II LitR蛋白質の多量体化および光受容体との相互作用に関わる領域を同定した。Class III LitRについては、大腸菌から得られた組換え蛋白質が光受容体に特有な光サイクルを示し、光依存的なDNA結合能を有することを明らかにした。また、Class III LitRがビタミンの一種である葉酸合成の光依存な転写制御に関与することを見出した。一方、Class IV LitR、TetR型レギュレーターおよびMarR型レギュレーターの光応答性蛋白質については、ゲルシフトアッセイやOne-Hybrid法などを用いて標的プロモーター領域との相互作用に関する詳細な情報を得ることに成功したが、アンテナ分子の同定には至っていない。これらの研究過程において、Bacillus属細菌の菌体外粘性物質ポリグルタミン酸の生産が光照射によって著しく抑制される現象を見出し、その分子メカニズムの解明を進め、ポリグルタミン酸合成遺伝子の発現およびその合成酵素活性が光によって強く抑制されることを示唆された。加えて、細菌の光受容体遺伝子を対象とした比較ゲノム解析を進め、ビタミンB12をアンテナ分子として利用するClass I LitRの近傍には、カロテノイド合成遺伝子の他に、光駆動性ポンプであるプロテオロドプシン、光受容体Photoactive yellow proteinなどがコードされていることを見出した。また、光応答性細菌を土壌などの自然環境より探索したところ、カロテノイドと予想される黄色色素を生産する細菌を複数見出した。系統分類学的な解析結果および類縁菌ゲノム情報より、既知の光センサーを有していない細菌が含まれていたことから、新しい光感知機構を備えていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LitRファミリーの遺伝生化学的な解析は上記の通り着実に進展している。Class II LitR蛋白質とLOV複合体の立体構造は現時点で決定に至っていないが、本制御系が新規な光感知機構であることから、機能ドメインの同定は大きな意義を有する。また、Class III LitRの光サイクルなどの生化学的な情報は、本蛋白質が新規な光受容体であることを強く示唆している。さらにビタミン合成の光依存制御というユニークな役割を果たし、細菌の光環境応答にとって新たな知見である。現時点における課題は、Class II LitR蛋白質については光受容体と複合体の立体構造を決定することである。他の光受容蛋白質についてはアンテナ分子を同定し、光受容体としての生化学的な証明をすることである。また、比較ゲノム解析により見出したClass I LitRと光受容体などの光関連遺伝子がセットで保存されていることは、LitRが環境適応スイッチとして働き、無駄なエネルギー消費を防ぐためのエコシステムとして多様な細菌に採用されていることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
LitRファミリーをはじめとする光受容体候補の機能解析を引き続き実施する。具体的には、Class II LitR蛋白質の構造解析を引き続き進める。Class III LitRを含む他のレギュレーターについてはアンテナ分子の化学的な同定を中心的に進め、光受容体としての証明を目指す。また、ゲノム情報を基にして、これまでに我々が同定した光誘導性遺伝子の周辺に共通してコードされている遺伝子の探索および転写解析を進め、新しいタイプの光受容体の発見を目指す。現在ではゲノム情報が多く蓄積している一方で、光に応答性を示す細菌の表現型に関する情報が乏しい状況であることから、自然環境からの光応答性細菌の分離ならびに細菌種の同定を進め、ゲノム情報および微生物表現型探索を融合したスクリーニングを実施することで新しい現象や微生物機能の発見を目指す。
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Causes of Carryover |
トランスクリプトーム解析を予定していたが、東京農業大学生物資源ゲノム解析センターの平成28年度共同利用・共同研究申請課題に採択されたため、トランスクリプトーム解析に必要な消耗品などを購入する必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の解析によって新たに見出した光応答性細菌のトランスクリプトーム解析を実施するための解析費用として使用する。
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Research Products
(4 results)