2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07683
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
木村 啓太郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門 食品生物機能開発研究領域, ユニット長 (20353980)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 挿入配列 / トランスポゾン / 納豆菌 / RNA-seq / Insertion sequence |
Outline of Annual Research Achievements |
挿入配列(IS)による細菌ゲノム多様性獲得メカニズムとその制御機構を解明するため、納豆菌の網羅的な転写物解析(RNA-seq 解析)を行った。納豆菌野生株(NAFM5)を最少培地(E9)で定常期まで培養し全RNAを市販のキット(Trizol regent, life technology)を用いて調製した。RNA-seqは受託解析機関(Filgen社)に依頼した。その結果、ゲノム解析によって同定された5グループ計37コピーの納豆菌各ISの発現量が明らかになった。5種類の挿入配列(IS4Bsu1, IS256Bsu1, IS643-like, ISBma2-like, ISLmo1-like)の発現量(RPMK値)の平均値が、IS4Bsu1は1.2 IS256Bsu1は51.2, IS643-likeは0.5, ISBma2-likeは0(検出されず), ISLmo1-likeは0.2であった。我々が過去に納豆菌細胞内でのプラスミドへのIS転移実験を行った時には、検出されたISの85%がIS4Bsu1,15%がIS256Bsu1であった(Kimura and Itoh, 2007)。今回得られたRNA-seqデータでは、IS256Bsu1の転写レベルはIS4Bsu1よりも約40倍高かった。これはISの転移に転写後調節が関与することを示唆する興味深い結果であった。一方、ISを全く保有しない枯草菌実験室株(B. subtilis 168)を用いたhop-onレポータアッセイ法(ISの両端繰り返し配列でレポーター遺伝子を挟み込む)でも、IS256Bsu1の発現量が他よりも顕著に高い報告があり(Akashi et al., 2017 and personal communication)、少なくとも転写段階ではISは両株でよく似た挙動示すことが本研究で初めて明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コピー数の大きい納豆菌IS遺伝子群の制御機構を研究する上で、RNA-seq法による網羅的な転写物解析は一度に全ISの転写量を比較できるので非常に有効な手法である。RNA-seq解析はほぼ予定通り進んだ。まず最初に、最少培地で培養した野生株納豆菌から納豆菌全RNAを抽出し受託解析機関で分析した。各ISの発現量(RPMK値)の平均値は、IS4Bsu1が1.2 IS256Bsu1が51.2, IS643-likeが0.5, ISBma2-likeは0(検出されず), ISLmo1-likeは0.2であった。IS4Bsu1とIS256Bsu1が転移能を有する主要なISであることが裏付けられた。しかし、使用した培養条件下ではIS4Bsu1が転移することが推定できる(粘り消失株が現れる)ので、IS643-likeの0.5,およびISLmo1-likeの0.2は無視できるRPMK値ではなく、今後これらが転写されていることをqPCR法などで確認する必要がある。ISBma2-likeの転写産物は検出されなかった。恐らく偽遺伝子であると思われた。 一方、転移頻度計測実験系の構築は当初計画よりもやや遅れている。各ISの発現制御の評価系構築のため、2つのプラスミドpQP1およびpQG1を入手した(東農大、吉川教授より分与)。いずれもIS4Bsu1の両末端繰り返し配列の間にレポーター遺伝子(pQP1はLacZ、pQG1はGFP)を連結したもので、転移先でそれらが発現した場合に酵素活性や蛍光を発現する仕組みである(hop-onアッセイ)。納豆菌にpQP1およびpQG1を導入したところ、LacZ活性染色法ではコロニーが部分的に青く染色された。しかし、通常の方法(Miller法)では有意なLacZ活性は測定できなかった。また、フローサイトメーター(Sony CE800)でGFP蛍光を捕らえようとしたが、分析細胞数を100万個まで増やしてもGFPの緑蛍光を有する細胞は検出できなかった。別の方法を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では各ISの発現制御の評価系構築が重要である。初年度に試したIS両末端繰り返し配列の間にレポーター遺伝子を組み込んだhop-on実験系(pQP1およびpQG1)は、納豆菌をホスト株として用いた場合には上手く機能しないことが判明した。恐らく、納豆菌細胞内での転移頻度が実験室株より低いことが理由であると考えられた。極最近、新しいIS転移検出法として2017年3月にJumping CAT法が発表された(Akashi, Genes and Genetic Systems, 2017)。これは、基本的にはやはりhop-onアッセイなのであるが、レポーター遺伝子にクロラムフェニコール耐性遺伝子が使用されているため検出感度を大幅に向上させることが可能である。今後はJumping CAT法を用いて研究を進める予定である。 大腸菌でみつかったIS 転移を促すタンパク質因子Iee(insertion sequence excision enhancer) の納豆菌ホモログに関する研究をすすめるため、Jumping CAT法による評価系を速やかに構築し、Ieeホモログ欠損株の作成等も平行して進める予定である。 RNA-seq実験にについても分析対象株や培養条件を追加して引き続き継続して遂行する。既に、コンピテンスの向上した変異株NAFM73(degQ::Erm)株やいくつかの未発表変異株等からの全RNA精製を終了した。予算的制約のなかでできるだけ多くの株でRNA-seq解析を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
効率的な研究費使用を行ったため、残額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は主に消耗品試薬に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)