2017 Fiscal Year Research-status Report
高分子取込みABC輸送体の分子機構の解析と改変による多様な物質輸送系の構築
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16K07701
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
丸山 如江 摂南大学, 理工学部, 助教 (90397563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 渉 京都大学, 農学研究科, 教授 (30273519)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アルギン酸 / ABC輸送体 / 結晶構造解析 / スフィンゴモナス |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌の細胞質膜に局在するABC輸送体は、基質の輸送サイクルに応じて立体構造を変化させる。また、その構造変化に伴い、ペリプラズムの基質結合タンパク質や、輸送基質、細胞質ATPなどのリガンドとの結合状態(親和性)も変化する。これまでに不活性な変異型輸送体を用いて、定常状態(基質輸送前)におけるスフィンゴモナス属細菌A1株由来アルギン酸ABC輸送体(AlgQ2、AlgM1、AlgM2、AlgS、AlgSのヘテロ5量体)の結晶構造を明らかにした。今回、輸送中間状態の構造を調べるために、輸送中のサブユニット間にSS結合を導入し、構造変化の制御を試みた。作製した変異体のうち、AlgS(S163C)とAlgS(A167C/S237C)を含むアルギン酸ABC輸送体は、野生型と同様に4量体構造をとり、かつ、還元剤存在下でのみATPase活性を示した。 一方、ペリプラズムにおいて基質をABC輸送体に運搬する他の細菌由来基質結合タンパク質において、カルシウムが基質輸送の調節に関わることが間接的に示唆された(Culurgioni et al., Structure 25, 79-93, 2016)。A1株のアルギン酸取り込みにおけるカルシウムの役割を明らかにする為、基質結合タンパク質AlgQ2の立体構造に基づき、カルシウム結合に関わる2つのアミノ酸残基をアラニンに置換した二重変異体(D179A/E180A)を作製し、①ABC輸送体のATP加水分解活性、②熱安定性、および③立体構造への影響について検討し、カルシウムが局所的な構造安定化にかかわり、熱安定性に寄与していること、また、ABC輸送体の酵素活性への影響は見られないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年から引き続き行った「活性を保持したアルギン酸ABC輸送体の結晶構造解析」については、大きな進展が見られなかった。これについては当初より想定していたため、変異体を用いた構造解析へと研究の主軸を移した。システイン導入変異体において大腸菌での発現量低下や4量体構造の不安定化のため、サンプルの確保に手間取ったものの、機能解析の面では一定の成果が得られた。引き続き培養と精製を繰り返すことで結晶構造解析も進めることができると考える。また、ペリプラズムの基質結合タンパク質中のカルシウムの機能に関する有用な知見が得られ、学会発表できる見通しである。以上より、順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね申請時の計画通りに進捗している為、引き続き計画書に記載の通りに研究を推進する。具体的には以下の通りである。 基質輸送中間体に構造を調べるために、システインを導入した2種類のアルギン酸ABC輸送体を精製し、SS結合を形成した状態(輸送中間状態)で、結晶化のスクリーニングを行う。結晶が得られれば放射光施設を用いてX線回折像を取得し、構造決定を行う。また、ペリプラズムの基質結合タンパク質において、糖の結合と解離に伴う構造変化へのカルシウムの影響を調べる。 アルギン酸をキャリアとした物質取込み系の開発を進める。還元的アミノ化反応により、アルギン酸オリゴ糖に低分子化合物を連結し、陰イオン交換カラムもしくはゲルろ過カラムを用いて精製する。AlgQ2と修飾オリゴ糖との親和性を、蛍光差スペクトル法を用いて解析する。また、アルギン酸ABC輸送体を再構成したプロテオリポソームを用いて輸送反応を行い、超遠心分離により回収したプロテオリポソームの蛍光強度を測定することにより基質輸送能を評価する。
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Causes of Carryover |
細菌の培養やタンパク質精製などの繰り返し行う実験の補助のために人件費を計上していたが、補助者を雇用せずに、研究室の学生と共同して実験を実施したため、人権に余剰が生じた。また、データ収集のための出張旅費を、所属機関の補助によりまかなうことが出来たため、支出が抑えられた。 今年度の残額は、次年度の人件費および受託解析に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)