2016 Fiscal Year Research-status Report
A novel choline-O-acetyltransferase from plant
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16K07704
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
村田 純 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 研究員 (90500794)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アセチルコリン / アセチルコリン合成酵素 / イラクサ / Urtica thunbergiana / 酵素精製 / ペプチドMSフィンガープリンティング |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の代表的な神経伝達物質であるアセチルコリン(ACh)は、神経を持たない植物にも存在することが近年明らかになってきた。植物におけるAChの生理機能は、薬理学的実験から根毛伸長や重力屈性などへの関与が示唆されているものの、詳細は不明である。加えて植物のACh合成酵素が未同定で、そもそも植物自身がAChを合成している証拠が無かった。これは、植物には動物ACh合成酵素の明瞭な相同遺伝子が存在せず、配列相同性からの植物ACh合成酵素の類推が困難なことが大きな要因であった。
そこでAChを比較的に高濃度蓄積する刺毛(しもう)を有するイラクサ(Urtica thunbergiana)の茎を材料に選び、LC-MSによるACh合成活性の検出を試みた。イラクサは、連携研究者である奈良女子大理学部・佐藤宏明准教授からの提供を受けた。その結果、動物同様cholineとacetyl-CoAを基質とするACh合成活性を検出した。この結果を踏まえて、イラクサ茎組織よりゲルろ過と陰イオン交換により同酵素の精製を進め、SDS-PAGEにてほぼ単一バンドにまで精製した。このバンドを切り出し、トリプシンによるin gel消化後、LC-MSを用いたペプチドMSフィンガープリンティングにより、アミノ酸配列の同定を試みた。タンパク質をコードする既知植物遺伝子のアミノ酸配列と照合した結果、機能未知の新規タンパク質の部分配列と非常に高い相同性を示した。このアミノ酸配列を基に縮重プライマーを合成し、イラクサcDNAを鋳型にしたPCR、次いで5'RACE、3'RACEを行った結果、同酵素をコードすると思われる全長cDNAを得た。分子進化解析の結果、同遺伝子はacyltransferaseスーパーファミリーに属し、新規なcladeを構成すること、単子葉、双子葉植物に広く保存されることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ACh合成酵素の精製と候補遺伝子クローニングを、計画通りH28年度中に完了できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は候補遺伝子を大腸菌で発現させ、得られた組換えタンパク質から当該酵素活性の検出を試みる。大腸菌でのタンパク質発現系の構築では、効率的に精製する目的で付加するタグや、大腸菌株の選定を行う。大腸菌での組換えタンパク質発現が困難な場合、酵母など別の組換えタンパク質発現系の利用を試みる。
以上に加え、qPCR等によりイラクサにおける遺伝子発現組織・時期特異性などの調査を行う予定。
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Causes of Carryover |
酵素精製ステップが概ね予定通りに進捗したため、精製が進まない場合に備えて追加購入を予定していたゲルろ過カラムが不要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入する発現ベクターの種類を増やし、組換えタンパク質発現の最適化に資する予定。
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