2017 Fiscal Year Research-status Report
作用機構変化を意図した天然物クラスター化による新規抗菌剤開発研究
Project/Area Number |
16K07708
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
榎本 賢 東北大学, 農学研究科, 准教授 (90546342)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | cluster effect / monensin / ionophore / proton channel |
Outline of Annual Research Achievements |
分子の多量化により結合力が強化される現象はクラスター効果として知られているが、生物活性物質の中には、多量化により作用機構が変化することで活性が強化される「作用機構変化型」ともいうべきクラスター効果を示す化合物も存在する。イオノフォア天然物monensin (Mon)は八量化するとプロトンチャネルに作用機構が変化することが計算化学により示唆されている。本研究では,Monを多量体化することでより強力な細胞毒性を示すプロトンチャネルを創製することを最終的な目標にしている。これまでに目的とするMon八量体は,二量体を構成単位としてそれが4つ連なったものであることがわかっている。そこで平成29年度は,Mon二量体の合成と活性評価を行った。Monの1位をリンカーで繋いで二量体を作製して生物活性評価を行ったところ,天然物には劣るものの,Neuro2A細胞に対して毒性を示すことを確認できた。続いて,これらの八量化に向けた合成を開始した。1-26位は八量体中で構成単位内での水素結合に関与するので,Mon分子中で残された修飾可能部位は7位ヒドロキシ基であった。種々検討の結果,7位を酸化してケトンとした後に,Horner反応に付すことでリンカーを導入することができた。続いて,これを足がかりとして八量体を調製するが,Voyerらのクラウンエーテルを用いたプロトンチャネル合成を参考にして(ACIE, 1997, 36, 967),ペプチドを「支柱」にして構成単位を配置する戦略を採用した。現在,「支柱」にあたるペプチドを作製しており,調製次第,構成単位(Mon二量体)を4つ「支柱」に並べて,Mon八量体がイオンチャネルとして機能するか評価を行う予定である。 この他にも、多量化による活性強化を期待してキノロン型天然物aurachin B及びHの合成も行った。今後,これらの多量化も進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、研究計画調書に記載した合成スキームによる多量体調製を目指していたが、平成28年度に二量体を一つの構成単位として八量体を合成する戦略に変更したため、当初の計画より遅れている。しかし、既報のデータを精査すると、本戦略の方がチャネル形成の可能性が高いと期待される。また,上述のように構成単位の調製は完了していることから,徐々に遅れを取り戻せていると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,「支柱」にあたるペプチドを調整し,それに構成単位(Mon二量体)を4つ並べて,目的とするMon八量体の合成を完了し,活性評価(細胞毒性試験)を行う。活性を示すことが確認できたら,配座解析にも挑戦して,どのような仕組みでイオンチャネルを構成しているか解明したい。
|
Causes of Carryover |
当初の予定では,平成29年度まではアルキルリンカーを使用してモネンシン八量体を合成する予定だったが,昨年度にペプチドを支柱として多量化する戦略に変更した。そのため,平成29年度にモネンシン以外の化合物の多量体まで合成することができなかった。従来は平成29年度に複数の化合物の生物活性試験を重点的に実施する予定だったにも関わらず,モネンシン二量体の生物活性試験しか実施できなかったため,当初の予定よりも執行額が少なく,残額が発生した。期間全体で見れば必要となる予算であるとともに,今年度中にモネンシン八量体の合成も完了できるものと考えているので,残額は当初の目的と同様の使途で平成30年度に使用する。
|