2017 Fiscal Year Research-status Report
統合的アプローチによるフラボノイドの核内倍加への機能解明
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16K07723
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
諸橋 賢吾 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 准教授 (60748937)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | システム生物学 / 植物分子生物学 / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は極めて多岐にわたる低分子化合物を生産するが、植物ホルモン以外の生体内の働きはほとんどわかっていない。特に二次代謝産物フラボノイドは様々な生体内イベントに関与しているにも関わらず、その分子メカニズムは不明の点が多い。これまでに申請者は1)フラボノイドが細胞内で様々なタンパク質と相互作用すること、2)フラボノイド欠損シロイヌナズナにおいて植物表皮細胞から分化した器官であるトライコームの核内倍加が低下することを見出した。本研究では二次代謝化合物であるフラボノイドの生理活性作用、とくに核内倍加現象への関与を証明し、その分子メカニズムを解明することを目的とする。そのために2つの課題を設定していた。1つは核内倍加現象にフラボノイド変異体の関係を調査することであり、2つめはフラボノイドにどのようなタンパク質が関与しているのか、次世代シーケンサーとファージディスプレイ法を組み合わせることで、網羅的な結合ペプチドの同定が可能な手法であるPD-Seq法による網羅的同定を通して、フラボノイド結合タンパク質がどのように核内倍加に寄与しているのかを調査する。H29年度では約30万種類以上のランダムな12残基からなるペプチドライブラリーを用いたPD-Seq法によってフラボノイドと結合する約500種類のペプチド配列候補の取得に成功した。また、シロイヌナズナの幼葉は垂直に発達するため、蛍光顕微鏡による観察が困難であった。H29年度は先端バイオイメージング支援プログラム(ABiS)による採択を受けることができ、幼葉の構造を保持したままフラボノイドの定量に成功した(光学顕微鏡技術支援活動採択番号81)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29進展の大きな理由は先端バイオイメージング支援プログラム(ABiS)の利用に採択されたことである。通常の蛍光顕微鏡では観察が困難な微小で立体的な構造である幼葉の表皮細胞に存在するフラボノイド(アントシアニン)の定量に成功した。トライコーム形成変異体と野生型の比較により、トライコームを形成しない細胞においてもフラボノイド量が変化していることを見出した。一方、フラボノイド結合ペプチドの次世代シーケンサーによる大量取得も解析を完了した。のべ70万種類以上のペプチド配列のうち、統計的に有意(P<0.05)にフラボノイド固定ビーズによって濃縮されているペプチドとして約500配列が候補として判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
H30の研究計画として、まず、PD-Seq法によって推定された約500のペプチド配列に関し、これらのペプチド配列とフラボノイドが結合評価を行う。ハイスループットで結合評価を行う手法を開発していく。また、行うことと並行して、これらペプチド配列をもつシロイヌナズナ蛋白質を調査し、核内倍加との関連が予想される遺伝子について個別の解析をすすめる。個別の遺伝子の機能と核内倍加と実際の植物体で観察する。その際、再びABiSの
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Causes of Carryover |
ABiS支援を受け、名古屋大施設の顕微鏡を使用するために、複数日学生を派遣し行う予定であった。しかしながら、実験が当初よりスムーズに遂行したため、差額が生じた。差額はH30年度において、消耗品代として使用する。
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