2017 Fiscal Year Research-status Report
食品由来低分子ペプチドの腸管吸収機構解明と新規生理作用探索
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16K07731
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
水重 貴文 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70571008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蕪山 由己人 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20285042)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | うつ / ストレス / ペプチド / 消化吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は、食餌性タンパク質を摂取した際に腸管で生成するペプチドの中から抗ストレス作用を示す新規ペプチドを見出すことを目的とし、様々な食餌性タンパク質の分解物の抗ストレス作用を調べた。抗ストレス作用を示した分解物を分画し、活性ペプチド画分を絞り込み、最終的に活性ペプチドを同定する従来法を用いてきた。昨年度までに、畜肉、魚肉、大豆、卵、牛乳など11種類の食餌性タンパク質素材のペプシン分解物をマウスに胃内投与し、うつ様行動に対する作用を調べたところ、魚肉タンパク質や枝豆など5種類の分解物を胃内投与したマウスにおいて、動物行動学的手法である強制水泳試験を用いて、うつ様行動が減少することを見出した。そこで、本年度は、魚肉タンパク質分解物をHPLCで分画し、それぞれの画分をマウスに胃内投与し、うつ様行動を調べた。その結果、いずれの画分においても、うつ様行動の変化は見られなかった。このことから、2成分以上の複合的な作用であることが示唆された。来年度は引き続き、画分を作成し、ペプチドを同定する検討を行う予定である。 また、新たな方法として、in situ門脈灌流システムを用いてタンパク質摂取時に実際に吸収される消化吸収ペプチドのアミノ酸配列をLCMSMSで同定し、それらの合成ペプチドのうつ様行動に対する影響を調べる方法を試みた。昨年度までに、いくつかのタンパク質の門脈灌流液を回収した。本年度、LCMSMSを用いたアミノ酸配列同定方法の確立を進めた。その中で、魚肉タンパク質胃内投与時の門脈灌流液を用いて解析したところ、トリペプチドやジペプチドなど消化吸収ペプチドのアミノ酸配列を同定した。来年度は、同定されたペプチドを合成し、うつ様行動に及ぼす影響を検討する予定である。また、他の食品タンパク質の解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、食餌性タンパク質分解物の分画を行い、それらの画分のうつ様行動に対する作用を調べたが、分画後の試料においては、抗うつ作用が見られなかった。2種類以上の成分の作用であることが示唆された。来年度、引き続き、活性ペプチドの同定を試みる予定である。 また、平成29年度は、食品タンパク質由来の消化吸収ペプチドを検出する実験系を確立し、ペプチド配列を決定した。来年度は、同定されたペプチドが灌流液に存在することを確認するとともに、抗うつ作用を示すか調べる予定である。このように、消化吸収過程を確認したペプチドの中から新規抗ストレスペプチドを見出せる可能性があり、研究計画通りに順調に研究は進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、昨年度までに抗ストレス作用を示すこと見出した分解物について、分画し、抗ストレス作用を示すペプチドの同定を引き続き目指す。また、消化吸収ペプチドとして同定されたペプチドについて、合成ペプチドを作成し、抗ストレス作用を調べ、実際に消化吸収される抗ストレスペプチドの同定を目指す。最終的には、さまざまな食品タンパク質を用いて、in situ 門脈灌流システムで腸管吸収物を解析することで、腸管吸収されやすいペプチドの構造を調べ、それらのペプチドと抗うつ活性との相関を明らかにしたいと考えている。
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