2016 Fiscal Year Research-status Report
妊娠期における日本型低栄養による次世代の生活習慣病素因形成機構の解明
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16K07732
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
平井 静 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 助教 (90432343)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 胎生期低栄養 / 糖質制限 / 肥満 / 糖・脂質代謝 / 膵島の発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々のこれまでの研究において、マウスの妊娠後期に食餌摂取量の制限(総エネルギー制限:タンパク質を含むすべての栄養成分の制限)または糖質のみの制限(糖質制限)によって摂取エネルギー量を40%制限すると、総エネルギー制限では出生仔において高脂肪食誘導性の肥満や糖・脂質代謝異常が増悪化されるのに対して、糖質制限ではこのような増悪化は誘発されず、むしろ脂肪細胞の小型化や新生仔期におけるインスリン分泌の変化などが認められ、糖質を有効に利用するための代謝システムの素因が胎生期に形成される可能性が示唆された。そこで本年度の研究では、上記のような胎生期栄養制限マウス(C57BL/6J)の新生仔期における脂肪組織と膵臓の発達について検討を行った。 総エネルギー制限群も糖質制限群も出生時体重は対照群より有意に低値を示したものの、離乳時までにはcatch up growthを示し体重差がなくなった。しかし新生仔期の皮下脂肪組織重量の増加は、糖質制限群では対照群と同等であったのに対し、総エネルギー制限群では高値を示した。 さらに新生仔期における血中インスリン濃度推移を検討したところ、両群とも出生時には有意に低値を示したものの、離乳時には差が認められなくなった。そこで、膵臓の免疫組織化学的解析を行ったところ、糖質制限群では新生仔期を通して対照群と同等であったのに対し、総エネルギー制限群では小型で未熟の膵島が観察され、また離乳時には小型ながらもインスリン染色に対して強く陽性反応を示す膵島が認められ、血中インスリン濃度を維持するために少数の膵島を酷使している可能性が示唆された。 以上の結果より、総エネルギー制限群は新生仔期においてすでに肥満および糖代謝異常の素因を有しているのに対して、今回検討した項目に関しては、糖質制限群は対照群と同等であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、胎生期低栄養マウス(C57BL/6J)の新生仔期における脂肪組織と膵臓の発達について検討を行った。当初は新生仔期のマウスの膵臓を用いて免疫組織化学的解析とβ細胞における遺伝子発現解析を行う予定であったが、新生仔期のマウスからβ細胞を単離することが不可能であったため、前者のみの解析を行った。その代わり、新生仔期の白色脂肪組織の重量変化に関する検討を加え、その結果、胎生期総エネルギー制限では新生仔期にすでに肥満体質を獲得している可能性が見出された。以上のことより、本年度の研究は概ね予定通り順調に進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題に関して、今後は、胎生期栄養制限下で出生したマウスの新生仔期における脂肪組織および膵臓の発達に関する検討を続けるとともに、次年度からは、現在の日本における実態をより反映したモデルとして、新たに「父親の肥満と母親の低栄養が次世代における生活習慣病発症に及ぼす影響」に関して検討を行う。また、父母の食習慣によって形成された生活習慣病の素因が、出生後の栄養によって改善可能かどうかについても検討を行っていく。
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Research Products
(3 results)