2017 Fiscal Year Research-status Report
消化管バリア損傷・修復の分子基盤の解明と高齢化社会に対応した消化管保護食品の創製
Project/Area Number |
16K07737
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 卓弥 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (30526695)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 加齢 / 食物繊維 / オリゴ糖 / 腸管バリア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、加齢に伴うバリア損傷を抑制する食品成分の探索に着手するとともに、加齢とともに罹患リスクが増大する慢性腎臓病における腸管バリア損傷に対する食物繊維摂取の影響を探索した。 C57/B6マウス(オス、1.5カ月齢)にフラクトオリゴ糖を含むあるいは含まない食餌を5か月間与えた(約6.5カ月齢まで)。腸管バリアの評価として、血液中のリポ多糖結合タンパク質(LBP)濃度を測定し、また蛍光色素(腸管上皮の細胞間のみを通過する色素)を経口投与したのち、血液中への移行を測定した。結果として、2カ月齢のマウスに比べて、6カ月齢のマウスの血液中LBP濃度は高値を示し、蛍光色素の血中移行も高かった。しかし、フラクトオリゴを摂取したマウスでは、それら上昇が明確に抑制された。これら結果から、フラクトオリゴ糖は加齢に伴う腸管バリア損傷を軽減できる食品素材である可能性が提案された。 一方で、慢性腎臓病のモデルマウスに水溶性食物繊維(グァーガムおよびその部分加水分解物)を摂取させたところ、慢性腎臓病に伴う血中LBPの上昇が軽減されるとともに、大腸のタイトジャンクション(TJ)発現低下が抑制された。このとき慢性腎臓病マウスでは、糞中の短鎖脂肪酸の減少、アンモニアの増加が引き起こされていたが、食物繊維の摂取はこれら変化を正常化した。また、慢性腎臓病モデルマウスの腸内細菌叢を解析したところ、対象マウスに比べてAkkermansia属の低下とDesulfovibrionaceae科の増加が認められたが、食物繊維の摂取はこれらを正常化した。これら結果から、水溶性の食物繊維の摂取は、腸管バリアの損傷と腸内細菌叢の異常を抑制することにより、慢性腎臓病を軽減することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画に従い、加齢に伴う腸管バリア損傷を軽減する食品成分の探索に着手し、期待通りの結果を得ているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、研究を継続する。加齢に伴う腸管バリア損傷を抑制する食品成分を探索し、その分子メカニズムを解析する。腸内フローラや腸内代謝との関連についても検討を加える。
|
Research Products
(5 results)