2018 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of intestinal barrier by food factors
Project/Area Number |
16K07737
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 卓弥 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (30526695)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 加齢 / 食物繊維 / オリゴ糖 / 腸管バリア |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究において、慢性腎不全モデルマウスの腸内細菌叢を解析したところ、硫酸還元細菌であるDesulfovibrionaceae科の増加が認められた。硫酸還元細菌は、硫化水素を産生する細菌であるとともに、Desulfovibrionaceae科は尿素をアンモニアに分解するウレアーゼを保有する。そこで本年度は、硫化水素とアンモニアによる腸管機能への影響に着目して研究を進めた。 慢性腎不全マウスの糞中のアンモニアと硫化水素の濃度は、対照群に比べて高値を示したが、水溶性食物繊維の摂取はこれらを有意抑えた。ヒト腸管上皮Caco-2細胞にアンモニアの硫化水素をそれぞれ作用させたところ、アンモニアはタイトジャンクションバリア機能を低下させ、硫化水素は細胞増殖を抑制した。アンモニアによる作用は、タイトジャンクション分子の細胞内局在を損傷していることも示された。硫化水素の影響を網羅的に解析するため、細胞から総RNAを採取してDNAマイクロアレイ解析を実施したところ、いくつかのサイクリンおよびサイクリン依存性キナーゼの低下が確認され、硫化水素は細胞周期の進行を遅延させていた。このとき、食物繊維の腸内細菌代謝物である短鎖脂肪酸の効果を調べたところ、アンモニアと硫化水素による上皮バリア損傷と細胞増殖の抑制を部分的に改善した。これらの結果により、慢性腎不全における腸管機能の損傷には、Desulfovibrionaceae科が産生する硫化水素やアンモニアが部分的にかかわること、食物繊維から産生される短鎖脂肪酸が保護的にはたらくことが示された。 研究期間全体を通じて、加齢や加齢とともにリスクが高まる慢性腎不全において、腸管バリア機能が損傷することが示されるとともに、腸内発酵性の高いオリゴ糖や食物繊維がそれらを軽減しうる食品素材であることが提案された。今後はさらなる分子機序の解明が必要である。
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Research Products
(11 results)