2016 Fiscal Year Research-status Report
生物物理学的アプローチで捉える両親媒性物質の輸送運命
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16K07739
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
城内 文吾 九州大学, 農学研究院, 助教 (00548018)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 両親媒性物質 / 門脈 / リンパ |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管で吸収された栄養素、機能性成分ならびに薬物が生体内の組織に運搬される経路は、その物質の物理化学的特性により異なり、門脈系(親水性物質)あるいはリンパ系(疎水性物質)を介して輸送される。しかし、エタノール可溶性のような両親媒性物質の動態(門脈系とリンパ系のどちらに依存するのか、2つの経路の分配が存在するのか)については明確なエビデンスが見受けられない。本研究では、門脈ならびに胸管リンパカニュレーション手術を施した動物を用いて、両親媒性物質の吸収・輸送動態を評価し、得られる生理現象を物理化学的側面から説明することを目指す。 本年度は、数種のグリセロリン脂質の門脈系輸送を評価すべく、動物実験を実施した。生理機能評価として、門脈血中の血糖値および胃排出の指標であるアセトアミノフェン濃度を測定したところ、グリセロリン脂質X(未発表データのため、名称表記は控える)を含む食餌の摂取により、食後上昇した血糖値のクリアランスが遅延し、そのメカニズムとして胃排出の抑制が関与していることが示唆された。また、吸収動態の把握にはグリセロリン脂質の定量が必要であることから、既存のTLC-リン定量法に代わる分析法として(検出感度の向上、操作時間の短縮を目指して)酵素法での定量法確立を試みた。しかし、生体サンプル中に共存するアミノ酸を影響を排除できず(分析結果に正誤差を与えるため)、酵素法での定量を断念した。次年度は、質量分析法(超臨界流体クロマトグラフィー質量分析等)での定量を検討したいと考えている。 さらに、胆管結紮術より脂質吸収能の低下および腸管の炎症を誘導した実験動物へホスファチジルコリンを摂取させたところ、リンパ液中の脂質濃度が上昇すること、回腸の炎症が抑制されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
グリセロリン脂質の分析法としてTLC-リン定量法が知られている。しかし、本法での測定可能な濃度範囲(ダイナミックレンジ)や操作時間を考慮すると、多数の試料を扱うには不向きと考え、蛍光物質を用いた酵素法による生体内のグリセロリン脂質の定量を試みた。しかし、共存するアミノ酸を影響を排除できず、酵素法での定量を断念した。次年度は、質量分析法(超臨界流体クロマトグラフィー質量分析等)での定量を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、質量分析法(超臨界流体クロマトグラフィー質量分析等)でのグリセロリン脂質定量を検討するとともに、数種のグリセロリン脂質のリンパ系輸送を評価すべく、動物実験を実施する予定である。門脈系、リンパ系の両輸送系での評価を行うことで、両親媒性物質であるグリセロリン脂質の輸送動態の解明を図りたい。 また初年度に見出した、グリセロリン脂質X(未発表データのため、名称表記は控える)の胃排出抑制機構についても検討を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
本研究課題の推進のため、年度をまたいだ消耗品の発注・購入が発生する可能性があると考えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金と合わせ、本研究課題の推進のため計画的に執行していく予定である。
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Research Products
(1 results)