2018 Fiscal Year Annual Research Report
Genetic structure and current range expansion of Haemadipsa japonica
Project/Area Number |
16K07768
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
逢沢 峰昭 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70436294)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニホンヤマビル / ミトコンドリアDNA / 核マイクロサテライトDNA / 地理的遺伝構造 / 遺伝的多様性 / 宿主動物 / シカ / 両生類 |
Outline of Annual Research Achievements |
全国のヤマビル39集団503個体のミトコンドリアDNA(mtDNA)のCOI領域の塩基配列を解析した結果、ヤマビルの系統は、秋田から淡路島や徳島にかけて広く分布するA系統群と、より限定されたB系統群の2つに大別された。分岐年代推定の結果、2系統群は第四紀中期更新世頃に分岐したと推定された。さらに、全国37集団798個体に対する9遺伝子座の核マイクロサテライト(SSR)の解析の結果、明瞭な地理的遺伝構造がみられた。また、A系統群の核SSRの遺伝的多様性は、緯度の上昇につれて低下していた。これらのことから、ヤマビルは更新世の氷期・間氷期の変動の中で2系統群に分岐し、さらにA系統群は完新世に入って急速に北へと分布拡大したと推定された。また、ヤマビルの核SSRの遺伝的分化の程度は、移動性の低いと考えられた両生類や水生ヒル類よりもかなり大きかった。これはヤマビルの低い移動性のために集団間で強い遺伝的分化が生じていると推察された。以上の成果は国際誌に掲載された。さらに、シカの分布が未確認の新潟県で2018年度にヤマビルの追加サンプリングを行い、ヤマビルの消化管内の血液塊からDNAを抽出し、mtDNAの16SrRNAの塩基配列を決定し、データベースと照合して宿主動物を同定した。前年度の結果と合せて、全国20県のヤマビル144個体の宿主動物がそれぞれ各個体1種類ずつ同定された。この宿主動物のうち4割はシカと同定されたことから、近年の分布拡大は主としてシカを介して起きていると考えられた。また、シカの分布未確認地域の秋田、新潟、群馬北部の宿主動物はカエル類やカモシカなどであった。シカの未確認地域との宿主動物相の比較から、シカの増加によって、それ以前はシカ以外の両生類や哺乳類などを宿主としていたヤマビルが、シカに宿主転換することで近年の分布拡大が起きた可能性も示唆された。
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Research Products
(4 results)