2016 Fiscal Year Research-status Report
放置竹林は野生動物被害の温床か？野生動物による竹林の利用実態と食物資源量評価
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16K07782
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| Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
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Principal Investigator |
大井 徹 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (10201964)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | 放置竹林 / 野生動物相 / 野生動物被害 / 食物資源量 / センサーカメラ / 非発筍期 / 植食性動物 / 雑食性動物 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
野生動物による竹林の利用実態を解明するために、石川県白山市坂尻でセンサーカメラ（動画撮影）による動物相とその行動に関する調査を行った。調査区は、稈密度の異なる放置竹林3箇所(竹・スギ混交林A、竹林B、竹林C)と、隣接するスギ林3箇所（スギ林A、スギ林B、スギ林C）に設けた。各調査区は30ｘ30m2の方形で、動物の採食場所や食物の位置を正確に記録するために、縦横5m毎に標識杭を設置した。
タケの稈密度は、タケ・スギ混交林Aで2690本/ha、Bで5490本/ha、Cで6120本/haであった。Aの林床は、草本が繁茂していたが、B、Cは下層植生がほとんど無かった。スギ林におけるスギの平均胸高直径と密度はAで25cm、740本/ha、40cm、440本/ha、42cm、430本/haで、いずれも、広葉樹の幼木、草本など下層植生が豊富であった。
カメラ（Ltl-Acorn6310W）は各調査区の4辺に1台ずつと、中央に3台、計7台、合計42台を設置した。2016年8月8日から2017年3月31日まで作動させたので、タケノコの生えていない時期の調査となった。
1906本の動画に15種類の哺乳類が撮影された。撮影本数で上位4種の動物は、カモシカ、イノシシ、ノウサギ、アナグマで、全体の80％を占めた。15種類の内、73％の動物が竹林とスギ林の両方で撮影された。林内の地上部のみ利用可能な草食動物（カモシカ、ノウサギ）は竹林よりもスギ林を多く利用し、竹林は主に移動経路として利用した。林内の地下部も利用できる雑食動物（イノシシ、アナグマ）はスギ林よりも竹林を多く利用し、移動経路としてだけでなく土壌中のタケノコや無脊椎動物を採食した。放置竹林はタケノコが生えていない時期も林床の地下部の利用が可能な野生動物に採食場所としてよく利用されていることが明らかになった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度計画では、4月～5月上旬に調査地を設定する予定であったが、適地の探索、土地所有者からの許可の取得に手間取り、6月に調査地を決定、7月に植生調査、標識杭の設置、8月にカメラの設置を行い、それ以降、動物の動画データを得た。また、計画には無かったが、竹林と対比するために隣接するスギ林も調査地に加えた。その後は、予定通り定期的に記録媒体（SDカード）を交換し、得られた画像をデータベースに入力整理するとともに、痕跡調査により野生動物の利用実態を把握した。年度末には、調査区、動物種、季節毎に、撮影頻度と画像から得られる行動を基に、隣接するスギ林と対比しながら動物種毎の竹林内環境選好性を予備的に分析した。
また、7月に鹿児島大学で開催される日本霊長類学会大会、9月に筑波大学で開催された日本哺乳類学会に参加し、特に、野生動物の生息地利用、食物の栄養評価についての研究と解析法について情報を収集した。
上記のように、発筍期のデータは得られなかったが、約8ヶ月分の非発筍期の竹林と隣接するスギ林を利用する動物の画像データを得ることができ、研究はおおむね順調に進展したと考える。
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| Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、タケノコの生えていない時期の調査となったので、平成29年度は、タケノコの生えている時期に主眼をおいた野外調査を行う。平成28年度と同様の調査区で、センサーカメラを用いて、隣接するスギ林と対比しながら、竹林の動物相とその行動に関する調査を行う。また、タケノコの生えていない時期の竹林は、「林床の地下部の利用が可能なイノシシなどの野生動物に採食場所としてよく利用されている」という平成28年度に得られた結論を、タケノコの生えていない時期における再調査により確認する。
タケノコが生えている時期においては、発生したタケノコが野生動物に利用される期間、被食部位、被食量を記録する。イノシシが竹林を利用するのべ頭数を推定し、タケノコの被食量との関係を明らかにする。
また、平成29年度には、竹林が景観レベルで点在する白山市坂尻の本調査地と景観レベルで竹林が含まれない白山市三宮（別のプロジェクトで150ｘ300mの調査区に９台のセンサーカメラを設置）での、動物相と撮影頻度を比較する。また、両地域でのイノシシなど野生動物による被害についても聞き取り、竹林の存在が野生動物相や被害に影響しているかどうかを景観レベルで評価する。
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