2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07783
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
名波 哲 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70326247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 明 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40274344)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 森林 / 樹木 / 共存機構 / 性表現 / 生活史 / 鳥類 |
Outline of Annual Research Achievements |
雌雄の性機能を個体レベルで分業する雌雄異株植物では,両性植物に比べて強い花粉制限がかかったり種子散布範囲が狭くなることによって,集団の維持が難しくなると予想される.これらの不利を補うための雌雄異株植物の生態特性として,これまでさまざまなものが列挙されてきた.まず,本研究では平成28年度に,雌雄異株植物は両性植物に比べて性的に早熟であることを実証的に示すことに成功した.平成29年度はこの成果をまとめ,学術誌に発表した(Doi: 10.1002/ece3.3117).さらに,平成28年度に行った音声データによる森林性鳥類の探索の成果も平成29年度には学術誌に掲載された.次に,鳥類による種子散布を雌雄異株植物と両性植物の間で比較するため,野外で鳥類の糞を集め,それに含まれる種子をカウントした.ただし,目的のためには糞を落とした鳥類種を知る必要がある.そのため,糞からDNAを抽出しミトコンドリアDNAのCOI領域の塩基配列から種同定を試みた.その過程においてサンプルとして糞を用いることによる特有の課題が明らかになり,プロトコルの確立には至らなかったものの,糞からの鳥類の種同定に大きく前進した.課題は以下の3点である.(1) 鳥類に餌として食われたさまざまな生物のDNAが夾雑物として含まれる.糞の中から鳥類のDNA だけを抽出することが重要である.(2) 日本産鳥類に特化し、かつ、糞中の断片化したDNA を鋳型とした場合でもフラグメントを増幅できる新たなプライマーの設計が有効であると思われる.(3) ただ1組のユニバーサルプライマーを用いるより,複数組のプライマーを組み合わせるほうが成功する可能性が高いことが示唆された.今後は見つかった課題を克服し,最終的には鳥類による種子散布効率を雌雄異株植物と両性植物の間で比較する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の一部が国際的な英文学術誌に1報,国内の和文誌に1報,掲載された.鳥類による種子散布に関する調査では,平成29年度には最終的なプロトコルの確立には至らなかったが,課題や解決策が浮き彫りとなり,成功する手ごたえを得た.よって,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
日本の森林で実証された雌雄異株植物の性的早熟性を,熱帯雨林で開花が観察され次第,ただちに調査を開始する.また,糞に含まれるDNAから鳥類種を同定する方法を確立する.
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Causes of Carryover |
(理由)鳥類の糞から抽出したDNAの増幅のために様々な課題が見つかり,予定していたサンプル数をこなすことができなかったため. (使用計画) 上記の実験プロトコルを確立し次第,鳥類の多数の糞の分析を進める.
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