2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07783
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
名波 哲 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70326247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 明 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40274344)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 森林 / 樹木 / 共存機構 / 性表現 / 生活史 |
Outline of Annual Research Achievements |
雌雄の性機能を個体レベルで分業する雌雄異株植物では,両性植物に比べて強い花粉制限がかかったり種子散布範囲が狭くなることによって,集団の維持が難しくなると予想される.これらの不利を補うための雌雄異株植物の生態特性の一つに、必ず他殖によって種子生産するため、集団中の遺伝的多様性が高くなる、ということが考えられる。平成30年度は、次世代シーケンサーを用いて、ゲノムワイドに多数の一塩基多型を検出し、奈良県春日山における遺伝的多様性を雌雄異株樹木と雌雄同株樹木との間で比較した。対象樹種は、いずれもクスノキ科の高木で、カゴノキとシロダモ(異株)とヤブニッケイとホソバタブ(同株)である。遺伝的多様性の指標とした多型サイトの割合、塩基多様度、ヘテロ接合度は、いずれも雌雄異株樹種のほうが高い傾向にあった。また、雌雄異株樹種では、ヘテロ接合度の期待値よりも観測値のほうが値が大きかった。これは、他殖による種子生産の効果かもしれない。さらに、雌雄異株樹種の雌株は、同株樹種よりも多くの果実を生産するため、ディスプレイ効果が大きく、多くの果実食性鳥類が集まる、という仮説を検証するため、春日山において、13 樹種を対象に訪れる果実食鳥類の種と個体数、採食果実数を観察した。の種子散 布共生系を調べた。その結果、メジロ、ヒヨドリ、シロハラ、コゲラ、ヤマガラが重要な種子散布者であった。雌雄異株のカラスザンショウは特に多くの鳥類種の餌資源になっていたが、雌雄同株のクマノミズキもまた、同程度の多くの鳥類種によって採食されており、今のところ、雌雄異株樹種と同株樹種との間には、明確な差は見つかっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の一部が国際学会で発表され、ポスター賞を受賞した。また、遺伝的多様性の生活史段階間で比較するため、一部の樹種については、成木だけでなく、実生や種子のサンプルも得た。よって、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の森林で実証された雌雄異株植物の性的早熟性を、熱帯雨林で開花が観察され次第、ただちに調査を開始する。また、遺伝的多様性の樹種間の比較を、熱帯樹木についても行う。
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Causes of Carryover |
(理由)対象樹種の葉から抽出したDNAの増幅のために様々な課題が見つかり,予定していたサンプル数をこなすことができなかったため。 (使用計画) 不純物を多く含む植物サンプルからのDNA抽出プロトコルを見直し,DNA解析を進める。
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