2019 Fiscal Year Research-status Report
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16K07783
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
名波 哲 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70326247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 明 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40274344)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 森林 / 樹木 / 共存機構 / 性表現 / 生活史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、雌雄異株性が生み出す樹木集団内の遺伝的多様性に焦点を当てた。本課題の研究対象であるクスノキ科の雌雄異株樹種、アブラチャン、クロモジ、ダンコウバイ、ヤマコウバシ、の地理的遺伝構造を調査した。このうちアブラチャン、クロモジ、ダンコウバイは雌株と雄株の交配によって種子を生産する。一方、ヤマコウバシについては日本では雌株しか見つかっておらず、アポミクシスによる種子生産によって集団を維持していると考えられる。これら4種を東北地方南部から九州地方にかけてサンプリングし、次世代シーケンサーを用いて多数の一塩基多型(SNPs)を検出した。 アブラチャン、クロモジ、ダンコウバイに関しては、種内の成木間で共通するローカスの中で、個体間の多型が検出されたものの割合は、およそ0.10~0.20であった。また、1本の母樹に由来する種子とその母樹の間で遺伝子型が異なるローカスの割合は、およそ0.05~0.10であった。さらに、ソフトウェアSTRUCTUREによる解析の結果、遺伝子組成の異なる分集団が認められた。 これに対しヤマコウバシに関しては、成木間で遺伝子型が異なるローカスの割合は0.03~0.05であった。また、1本の母樹とその母樹に由来する種子の間で遺伝子型が異なるローカスの割合は、0.02~0.03と少なかった。さらに地理的スケールでの遺伝子組成の分集団はまったく見られなかった。ヤマコウバシのアポミクシスは、遺伝的多様性を生まないという不利がある一方で、交配相手である雄株を必要とせず雌株が単独で種子生産できるという利点があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
繁殖様式が異なる樹種間で遺伝的多様性を比較した事例は少ない。今年度は、複数の樹種の遺伝情報を地理的スケールで解析できた。よって、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
同様の解析、すなわち遺伝的多様性の樹種間の比較を、熱帯樹木についても行い、多様性と繁殖様式の関係の普遍性あるいは地理的な変異を探る。
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Causes of Carryover |
(理由)対象樹種である熱帯産樹木の葉からのDN抽出の結果が思わしくなく、予定していたサンプル数をこなすことができなかったため。 (使用計画) 不純物を多く含む植物サンプルからのDNA抽出プロトコルの見直しと生成方法の検討を行い,DNA解析を進める。
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Research Products
(3 results)