2019 Fiscal Year Research-status Report
森林被害評価にもとづく日本型シカ管理体制構築に関する研究
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16K07786
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
明石 信廣 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部 林業試験場, 支場長(林業試験場) (40414239)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シカ / 森林被害 / 生息密度推定 / カラマツ |
Outline of Annual Research Achievements |
エゾシカによって食害を受けたカラマツ幼齢林の樹高成長を解析した。林齢と被害率からその林分の被害レベルを推定し、1年間の食害回数、その状況における樹高成長を予測するモデルを作成した。カラマツはエゾシカ食害を受けても樹高成長を続けられることが多く、樹高1mに達するまでの期間が1年長くなるのは非常に激しい被害を受けた林分に限られることがわかった。 北海道津別町・美幌町の北海道有林においてライントランセクト法によるエゾシカの生息密度調査を3年間継続して行ったところ、調査結果は年によって大きく異なり、3.74-11.53頭/平方kmと推定された。この地域のトドマツ人工林において広葉樹稚樹を2年間継続調査したところ、前年に比べて稚樹数は減少傾向であり、シカのさらなる低密度化が必要であることが示唆された。この地域では数年前に比べて積雪期のシカが減少していると考えられ、非積雪期にはシカが分散しており、囲いワナによる捕獲効率は非常に低かった。 欧米では狩猟による捕獲を増やすことによってシカの生息密度を低下させた事例があるが、北海道ではすでにメスジカの捕獲頭数に制限がなく、狩猟による捕獲を増加させるのは困難だと考えられる。北海道の人工林の多くを占めるカラマツやトドマツはシカ被害による枯死は少なく、森林管理者が被害軽減のために捕獲する必要性は低い。低質な餌でも生息できる特徴を持つニホンジカの影響を受ける天然林では、深刻な影響を回避するには高密度化の前に早期の対策が必要であり、激害を受けた森林の回復には長期を要する。これらのことから、日本におけるシカ管理には、森林被害だけでなく農業被害や交通事故など多様な影響を考慮した公的資金による管理が不可欠であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道津別町・美幌町をモデルとして、地域の関係者と協力しながら、被害の評価とシカの生息状況の評価を踏まえた森林におけるシカ捕獲を予定どおり試行したほか、ブラジル・クリチバで開催されたIUFRO世界大会に出席し、海外の研究者との意見交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
発表を予定していた日本森林学会大会の開催が中止となったため、次回大会での発表を予定するとともに、成果の公表をすすめる。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた日本森林学会大会が中止となったため、次回大会に参加する。
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Research Products
(5 results)