2016 Fiscal Year Research-status Report
野ネズミと種子食昆虫との相互作用がコナラ堅果の生存過程に与える影響の解明
Project/Area Number |
16K07794
|
Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
島田 卓哉 国立研究開発法人森林総合研究所, 東北支所, グループ長 (10353723)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 堅果 / コナラ / 野ネズミ / 種子食昆虫 / 間接効果 / 動物-植物相互作用 / Seed fate |
Outline of Annual Research Achievements |
コナラ属樹木は日本の森林の主要な構成種である。その種子(堅果)の生存過程を解明することは、コナラ属樹木の更新過程や維持機構を解明し、ナラ・カシ林生態系の保全・管理を実施する上で重要な貢献となる。本研究では、堅果の主要捕食者であるシギゾウムシ類などの種子食昆虫と森林性野ネズミとの相互作用がコナラ堅果の生存過程に及ぼす影響を解明することを目的として、岩手大学滝沢演習林(岩手県滝沢市)のコナラ林固定調査地で調査を行った。コナラ対象木について、それぞれシードトラップを2器と堅果・実生調査区画を2区画設定し、堅果生産量、堅果の形質および堅果の生存過程を調査した.今年は中規模の実りが認められたが、堅果の8割以上は積雪の前に野ネズミ、種子食昆虫、および菌類の作用によって死亡した。また、堅果捕食者の動態を明らかにするために、種子食昆虫については対象木それぞれに羽化トラップ2器を設置して羽化状況を調べ、野ネズミついては4月から11月まで二週間に一度標識捕獲調査を行った。シギゾウムシ類の羽化はほとんど確認できなかった。野ネズミ(主にアカネズミ)は、健全な堅果も虫害堅果も摂食したが、健全堅果の場合にはその後の成長が困難なほどに食害を受けるのに対し、虫害堅果の場合は穿孔しているゾウムシ類幼虫のみを摂食する傾向が認められた。この場合、堅果は生き残って実生となる可能性があるので、野ネズミの昆虫への摂食が間接的にコナラに対してプラスに働く可能性があることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野ネズミの個体群動態調査、コナラ種子の生産量と生存過程調査、シギゾウムシ類の羽化状況調査等は計画通り実施し、おおむね想定したデータを得られている。また、今年度分のデータの整理・解析も進んでいるため、研究は順調に進んでいると判断した。 しかし、羽化トラップによるシギゾウムシ類の捕獲数が少なかったことは、方法上の問題である可能性もあるため、調査方法の修正を検討する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度と同様に、堅果生産量、堅果生存過程、種子食昆虫と野ネズミの個体数調査を継続する。また、今年度採集した堅果の一つ一つの形質(種子サイズとタンニン含有率)を、夏までに測定し、堅果生存過程の解析に加える。 加えて、シギゾウムシ幼虫に対する野ネズミの捕食圧を測定するために、幼虫の寄生している堅果を人為的に林床に設置し、野ネズミがその堅果にアプローチできる条件とできない条件とで幼虫生存率の比較を行う。この実験には、ソフテックスを用いてシギゾウムシ幼虫が存在していることが確認できた堅果を用いる。
|
Causes of Carryover |
実体顕微鏡を購入する予定であったが、他研究室の機器を利用することが出来、購入を行わなかった。また、飼料類、床敷きなど動物飼育関連資材の使用量が想定よりも少なかったため、消耗品費の出費が抑えられた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度集積したサンプル類の分析のための、消耗品費および謝金として用いる予定である。
|
Research Products
(4 results)