2016 Fiscal Year Research-status Report
流域水収支法で推定した森林蒸発散量の同位体年輪年代学的解析を用いた検証
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16K07796
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
久保田 多余子 国立研究開発法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (70353670)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 年輪 / セルロース / 酸素安定同位体 / 炭素安定同位体 / 蒸発散量 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林流域からの蒸発散量は樹木の成長・伐採かつ気候変動に応じて変化し、水循環科学のみならず水資源利用の立場からも重要である。本研究では森林理水試験地で長期間蓄積された水文・気象データのみならず、年輪セルロースの同位体比から蒸散量を復元することにより、気候変動と森林変化の両方が森林蒸発散量に及ぼす影響を実証的、かつこれまでより高精度に解析することを目的とする。一般に流域水収支法では、年降水量から年流出量を差し引いた年損失量を森林からの年蒸発散量とみなす。しかし、この方法では流域貯留量を考慮しないために、小雨年に年損失量が小さいことが蒸散量の抑制によるのか、貯留量を減少させて蒸散を維持しているのか区別ができなかった。このことから流域貯留量に左右されない指標が必要であった。この指標として有効なものに、気候復元に用いられ、蒸散の指標となる年輪セルロースの炭素および酸素同位体比がある。釜淵森林理水試験地では1939年より気象観測と流量観測が開始され、2016年現在も継続されている。また、流域内には1914年に植栽されたスギがあり、約100年の年輪コアを採取することができ、本研究を遂行するのに適している。そこで、気候変動を解析するために、本試験地の気温、湿度、日射量、および、降水量と流量から計算した損失量を日単位のデータとして整理した。日射量は日照時間の観測のみの期間は、日照時間より推定した。また、欠測は気象庁のデータをもとに補間した。これらの長期変動と相関を調べた結果、損失量は日射量と相関が高いことが明らかになった。また、6個体のスギの年輪を成長錘により採取した。今後、これらからセルロースを抽出して、1年輪ごとあるいは1年未満の時間単位で、炭素および酸素同位体比を調べ、蒸散量を推定し気候変動や森林変化との関係を解析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長期データの整備については、気温、降水量、流量、日射量の推定は計画通りに日単位のデータとして整備した。湿度についてもおおむね整備したが、数値の精査が必要である。 スギの年輪コアの採取もおおむね計画通りに終えたが、補足的な採取が今後必要になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
年輪コアの薄片を作成し、リグニン、ヘミセルロース等を除去して、板状のセルロースを抽出する。セルロースの薄片上の年輪を見ながら、セルロースを年ごとに切り分け、それらの炭素同位体比および酸素同位体比の分析を行う。
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Causes of Carryover |
購入予定の分析天秤が製造中止で型番が変わり、後継機種は価格が上昇していたため、旅費と人件費・謝金の使用予定を変更し分析天秤の購入にあてた。このため、全体として助成金の余剰金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金は、翌年度の物品費として分析にかかる消耗品を購入するために使用する。
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Research Products
(2 results)