2016 Fiscal Year Research-status Report
サクラ類こぶ病に対する抵抗性を光で誘導する条件と生理的メカニズムの解明
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16K07798
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
石原 誠 国立研究開発法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (90353581)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ソメイヨシノ / コンパクト挿し木苗 / 抵抗性誘導(抵抗性崩壊) / 光量不足 / 解剖学的観察 / 過敏感反応 / 病原細菌 / 封じ込め |
Outline of Annual Research Achievements |
ソメイヨシノのこぶ病に対する抵抗性は光量不足により崩壊する(強光下で誘導される)ことが、実験的に確認されているが、摘葉処理でも抵抗性の崩壊が起こるため、現象の詳細解明には、葉の数等、苗の状態を一定に保ちながら解析する必要があった。そこで、挿し木発根苗の作成を試み、接ぎ木2年生苗同様、光量不足で抵抗性が崩壊するか調べた。その結果、ソメイヨシノ挿し木の発根は発根促進剤の添加や緑枝をミスト挿しすることで達成されるが、オオヤマザクラに比べて育成温度を高く保った方が、発根と芽の伸長共に良好であり、光量管理下の接種実験を行うのに適した、コンパクトな供試苗の生産が可能となった。作成したコンパクト挿し木苗は、光量が不足した条件下でこぶ病菌を接種したところ、こぶ病患部が増大する傾向があったことから、抵抗性が崩壊していることが確認され、現象解明に向けて種々の実験、解析へ利用可能なことが分かった。 次に抵抗性崩壊時のこぶ病患部組織の変化について、人工気象室内でソメイヨシノ接ぎ木苗にこぶ病菌を接種した後、強、中間、弱の強度の異なる白色光下または、中間の強度の青色光下で生じた病患部に対して解剖学的観察を実施したところ、中間または弱い強度の白色光下で生じたこぶ病患部の大きさは、強い強度の白色光下や中間の強度の青色光下のそれらよりも大きく、前者では、接種部以外の枝組織全体に細胞の壊死が広がり、また、こぶの増大につれ、カルス化細胞数も増大した。これに対して後者では、組織の壊死が接種部とその周辺に限定され、こぶの大きさも小さくなった。後者で細胞の壊死が広がらなかったのは、過敏感反応によりプログラムされた細胞死が起こって、病原細菌の封じ込めに成功したからと考えられる。異なる光強度、光質でこのような違いが生じたことから、光条件が本病の発生とこぶの発達に大きく影響していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画にあったコンパクト実験系の確立と解剖による組織変化の観察の2つの項目において必要十分な結果が得られたから。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)現在、抵抗性崩壊(誘導抵抗性)の現象面での詳細解明を進めており、引き続き、この解明を行う。(2)解剖による組織変化の観察について、更に詳細な変化の観察を行う。(3)コンパクト実験系を活用した、阻害剤処理下における抵抗性誘導実験を行い、シグナル伝達の可能性について検討する。(4)抵抗性を示す感染組織内で起きている遺伝子発現等の解析可能性について検討を開始する。
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Causes of Carryover |
新たにUVを含めた太陽光由来電磁波を計測する装置の導入の必要性が判明したが、当該年度内に機器の選定、購入が間に合わず、次年度に再検討する事になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ほぼ全額を光・UV等の発生装置と計測装置の購入に使用予定である。
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