2017 Fiscal Year Research-status Report
木質構造の接合部のクリープ破壊に及ぼす水分の影響の解明と予測
Project/Area Number |
16K07804
|
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
中島 史郎 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 教授 (00344010)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 貴文 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 主任研究官 (60414968)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 接合部 / 接合具径 / 荷重比 / 長期継続荷重載荷試験 / クリープ破壊 / モデル化 / 粘弾性体 / せん断破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
接合部試験体を構成する木材の材幅に対する接合具の径の比率(以下、[接合具径/材幅]と呼ぶ)が[3.0/30]、[3.5/30]、[4.0/30]、[4.5/30]、[5.0/30]、[5.5/30]、[6.0/30]、[6.5/30]、[7.0/30]となる9仕様の試験体に対する長期継続荷重載荷試験を実施した。長期継続荷重載荷試験は、湿度変動下と標準状態において実施した。なお、載荷した荷重は短期加力試験により得られた最大耐力の70%、75%、80%、85%、90%とした。 湿度変動下における長期継続荷重載荷試験より以下のことを明らかにした。[接合具径/材幅]が[3.0/30]~[4.5/30]の[接合具径/材幅]が小さい試験体は接合具が曲げ変形をしながら木材が割裂破壊し破壊に至る。[接合具径/材幅]が[5.0/30]~[7.0/30]の[接合具径/材幅]が大きい試験体は接合具が変形せず木材がせん断破壊し破壊に到る。試験体が破壊に至る時間は、例えば、荷重比70%の荷重を載荷した場合、[接合具径/材幅]が小さい試験体では約1450日であるという結果であったのに対し、[接合具径/材幅]が大きい試験体では約10日となり、接合部の破壊形状がクリープ破壊に至る時間に著しい影響を及ぼすことを明らかにした。一方、標準状態におけるクリープ破壊に至る時間は、湿度変動下に比べると著しく長くなる傾向にあった。 [接合具径/材幅]が大きい試験体について、接合部のクリープ破壊現象をモデル化した。モデルは接合部を構成する木材がせん断破壊するものとし、せん断破壊が生じる木材部分を3000の微細な要素としてモデル化した。各要素を粘弾性体としてモデル化し、時間経過とともに個々の要素が順次破壊に至り、接合部全体の破壊に至るまで過程を計算により再現した。計算の結果は実験結果と概ね一致した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
接合部試験体の長期継続荷重載荷試験を行ったところ、前年度同様に想定していた破壊に到る時間よりも長い間、接合部試験体が破壊に到らず、1つの試験体に要する時間が想定していたよりも長くなった。破壊に至る時間は、湿度変動下において行った試験よりも標準状態において行った試験のほうが長く、後者については特に予定していた数量の試験を行うことができなかった。一方、湿度変動下における長期継続荷重載荷試験については、概ね当初予定していた実験を完了することができた。両試験ともに継続して実験を行っている。 なお、接合部のクリープ破壊現象のモデル化については、接合部を構成する木材がせん断破壊する接合部については多数の要素からなる粘弾性モデルを作成し、実験結果を概ね再現するに至っており、当初の計画通りに進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
長期継続荷重載荷試験については、標準状態における接合部の長期継続荷重載荷試験を中心に継続して試験を実施する。この際に、試験体が破壊に到る時間が想定していた時間よりも長くなることが確認されているので、1つの仕様に対して行う試験体数を調整し、全ての仕様と荷重比の組み合わせに対してデータが得られるようにする。接合部のクリープ破壊現象のモデル化については、平成29年度に接合部を構成する木材がせん断破壊する場合についてはモデル化とコンピュータを用いたシミュレーションを行い、実験結果を概ね再現できており、今後、実験結果と比較を行い、より精緻なモデルの検討を行う。また、接合部を構成する接合具が曲げ変形し、木材の割裂により破壊する場合については、今後、モデル化とコンピュータを用いたシミュレーションを行う予定である。最終年度にあたり、実験の結果とシミュレーションの結果を取りまとめる。
|
Causes of Carryover |
標準状態における接合部の長期継続荷重載荷試験において、試験体が破壊に到る時間が当初予定した以上に長く、同試験に想定以上に時間を要した。このため、平成29年度に予定していた接合部の長期継続荷重載荷試験のすべてを実施することができず、平成30年度に実施することとした。以上の理由により、当該試験に供する試験体の一部の作成と関連する測定用品(ひずみゲージなど)の一部の購入については、平成29年度には実施しておらず、次年度に作成・購入することとしたため、次年度使用額が生じた。
|
Research Products
(1 results)