2018 Fiscal Year Research-status Report
還元性末端に着目したセルロースナノファイバー耐熱化法の開発
Project/Area Number |
16K07809
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
秀野 晃大 愛媛大学, 紙産業イノベーションセンター, 講師 (30535711)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セルロースナノファイバー / 熱分析 / 還元性 / 酵素処理 / セルラーゼ / ヘミセルラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、セルロースナノファイバー(CNF)の機能化による用途拡大を目指し、CNFの熱分解に関わる解析およびセルロースで蓄積された知見を活かす事で、CNFの熱分析に関する基礎的知見の拡充を行うと共にCNFの耐熱化を図るものである。昨年度は、CNF還元性末端のグリコシル化を試み、窒素雰囲気下で、グリセロール中で高温高圧で反応を行ったところ、セルロースの分解が進行した為、処理条件の再検討が必要であった。一方、昨年度検討したCNFの還元性と熱分解の関係性から、市販のCNFにセルロースの還元性末端の他に、セルロース以外の成分(特にヘミセルロース)で還元性を有し、熱分解温度を大きく低下させる事や、非晶セルロースの存在によっても熱分解温度の低下が示唆された為、当該年度は、酵素処理による非晶セルロースおよびヘミセルロースの除去を検討した。酵素を使用する際は、至適pHを維持するため、通常、緩衝液を用いるが、CNFに対して緩衝液中で酵素処理を行ったところ、CNFの熱分解温度が大きく低下した。緩衝液中の成分をCNFから完全に除去する事が困難であったと考えられる。そこで、緩衝液を使わないセルラーゼ処理を行ったところ、全体的に熱分解温度が上昇した。セルラーゼ処理によって、CNFに含まれる微量の非晶セルロースやヘミセルロースが除去されたと考えられる。その他、緩衝液を使わず、市販のヘミセルラーゼ処理を行っても、同様にCNFの熱分解温度が上昇した。酵素の種類や反応条件を検討する事で、CNFの熱分解温度をさらに上昇させる事ができる可能性がある。また、当初予定にはない試みであったが、CNFよりも熱分解温度の高い高分子を混ぜることで、CNFの熱分解温度が上昇することを確認した。CNFの用途によっては、添加剤として本高分子を適用できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画であった、還元性末端のグリコシル化については、条件検討を継続する必要がある。進捗は遅れているが、CNFの熱分解に対して、非晶セルロースやヘミセルロースの影響が大きい事を明らかにすると共に、それらの除去に適した酵素処理条件を見出す事に成功した点は、本研究の目的を達成する上で重要であった。しかし、キチン・キトサンへの展開なども含め、さらに検討を進める必要があった為、1年間の延長申請を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討結果から、CNFの熱分解温度を上げるためには、①CNFに含まれる熱分解温度の低い非晶セルロースやヘミセルロースの除去、②還元性末端基の化学修飾、③CNFより熱分解温度の高い高分子の添加、の大きく3つのアプローチが有効である事がわかってきた。①および③については、基礎検討の結果が得られており、②について引き続き反応条件の検討を続ける。また、CNF以外のキチン・キトサンナノファイバーに対しても同様のアプローチを適用する。
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Causes of Carryover |
当該年度実施予定の試験項目が残っていたため、1年間の延長申請を行ったが、当該年度に購入した物品で殆ど賄えるものの、消耗品が不足すると予想された為、残金を用いる予定である。ディスポサブルのチップもしくはマイクロチューブの購入にあてる。
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Research Products
(11 results)