2016 Fiscal Year Research-status Report
介護予防に資する木育活動の検証と支援スタッフ養成カリキュラムの開発
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16K07811
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田口 浩継 熊本大学, 教育学部, 教授 (50274676)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 木育 / 介護予防 / スタッフ養成 / 木育カリキュラム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の介護保険制度の改正に伴い各市町村では、要支援・要介護になる前の段階から介護予防に資する予防重視方システムの確立が求められる。一方、木材利用に関する教育活動である木育は、木や森について知る、木や森に触れる、木を素材にしたものづくりからなる。従来の木育は、子どもを対象とするものが多く見られた。本研究では、介護予防に資する木育プログラムを検討するとともに、それらを指導するスタッフの養成と実践に取り組む。さらに、介護予防における木育活動の効果について検証し、他地域や全国に提供できる介護予防に資する木育プログラム及びこれらを担うスタッフ養成プログラムの開発を行う。 平成28年度は、熊本県玉名郡長洲町で実施されている介護予防等に関連した木育活動について調査した。具体的には、平成28年8月から10月に介護予防拠点施設で木育活動を提供すると共に、各種活動に参加した116人(男性:19人,女性:97人)に対してアンケート調査を行った。 その結果,木育活動に対して,介護予防に有効とされる生きがいややりがいを認識していることが明らかになった。さらに,単に木育活動に参加するよりも,その指導者としての活動が,より社会参加や社会的役割を実感することができ,介護予防には効果的と捉えていた。また,課題となる男性の介護予防活動への参加についても木育活動の効果が期待できることが明らかとなった。 木育を指導するスタッフ養成講座では、木育と介護予防の関連性・親和性については、内容に含まれておらず、これまでの研究成果を講座の内容に導入することが求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に従い介護予防施設における木育を実施した。長洲町の介護予防拠点施設では,平成27年度は21日,14施設において木を素材にしたものづくり教室を開催し,円形木琴や金魚の車,積み木,ミニ門松の製作を行った。なお,これらの教材は,熊本大学と熊本ものづくり塾が開発したものである。平成27年度は,延べ423人の参加があった。指導は,熊本大学教員,熊本ものづくり塾および長洲町の木育推進員(一部は町職員)など延べ70人が担当した。平成28年度は,年間12日(午前と午後に分け同時に2施設で開催することにより,1日最大で4施設で実施),32施設において延べ48回実施した。指導は,熊本ものづくり塾の会員が延べ48人,長洲町の木育推進員が延べ30人担当した。 これらの施設においてアンケート調査や聞き取り調査を行い、木育の介護予防に資する効果を測定した。これらの事については、学会で発表するとともに論文化した。また、これまでの木育に関する成果を単著(森林親和運動としての木育 ―ものづくりの復権と森林化社会の実現ー,九州大学出版)として刊行した。
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Strategy for Future Research Activity |
介護予防拠点施設における木育活動については,平成29年度以降も継続的に実施すると共に、調査を行いその詳細な効果についても明らかにしていきたい。具体的には,平成28年度の高齢者の木育活動への参加者数や参加率,さらに,木育活動を積極的に行った地域とそうでない地域の要介護認定率,町全体の介護サービス給付費の推移を調査する予定である。さらに,木育活動の実施前と事後に,緊張・抑うつ・怒り・活気・疲労・混乱を測定する心理テストを行い,活動毎の情緒面の効果について明らかにしていきたい。 また、これまで実施してきた木育の指導者を養成する講座においても、介護予防の視点を取り入れた内容を開発し、平成29年度の講座から導入する予定である。
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Causes of Carryover |
熊本地震により、年度前半は研究計画に従った実施は困難となった。また、平成28年度より副学部長となり、熊本地震への対応が年度前半に集中し、年度後半は会議の日程など考慮すると長期に大学を空けることが難しく、予定していた海外出張を入れることができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度実施できなかった事案については、出来るだけ早く実施する。海外出張(韓国への調査)についても、国内外の情勢を考慮しつつ、早期に実施する。
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Remarks |
木育を実施する場合に使用する教材・教具やその指導案、副読本などを紹介している。
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