2017 Fiscal Year Research-status Report
針葉樹仮道管分化におけるサイトカイニンの役割の解明
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16K07812
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
雉子谷 佳男 宮崎大学, 農学部, 教授 (10295199)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サイトカイニン / 早・晩材形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
針葉樹の早・晩材形成の仕組みを解明するために、植物ホルモンのうち、サイトカニンの働きに着目した。 昨年度開発した連続凍結切片での植物ホルモン定量方法を用いて、早材形成中のスギ形成層付近と晩材形成中のスギ形成層付近の内生植物ホルモンの組織内分布を調べた。晩材形成中のスギ樹幹において、オーキシンは、スウェーデンの研究チームが報告したように、形成層にピークがあり師部側や木部側に離れにつれて激減した。活性型サトカイニンであるゼアチンは、形成層と師部にわずかに存在した。一方で、不活性型のサイトカニンであるゼアチンリボシドは、木部に大きなピークが存在した。早材形成中のスギ樹幹では、オーキシンのピークは形成層にあるものの、晩材形成中試料に比べると最大値が小さく、師部側、木部側へ離れるにつれて緩やかに減少した。活性型サトカイニンであるゼアチンは、大きなピークが木部側に存在し、不活性型サイトカイニンであるゼアチンリボシドは、小さなピークが師部側に存在した。もう1つの活性型サイトカイニンであるイソペンテニルアデニンとその不活性型サイトカイニンであるイソペンテニルアデノシンでも同様の傾向、すなわち、早材形成中には活性型が木部に、晩材形成中は不活性型が木部に存在した。植物ホルモン投与実験によって、早材形成は活性型サイトカニンによって誘導され、オーキシンによってこの働きが阻害されることをすでに報告した。今年度得られた早・晩材形成中の植物ホルモンの組織内分布は、投与実験の結果を支持するものであった。 スギ苗木を用いたポット実験をおこない、土壌中の水分量、根の発達、樹幹の木部形成および内生植物ホルモン量との関係を調べる実験を行った。予想通り、土壌中の水分量によって、根の形成および木部形成に違いが見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物ホルモンの定量は、植物試料に含まれる含有量が少なく分析装置に高い性能が求められる。とくに、サイトカイニンは含有量が少なくオーキシンに比べ定量が難しい。また、針葉樹形成層付近の植物ホルモンの定量に用いる分析用試料は、長さ2-3cmの立方体程度の大きさが一般的である。今年度は、仮道管形成における植物ホルモンの役割を詳細に検討するため、外樹皮から、内樹皮、形成層、分化中木部、木部までの範囲で、どこにどの植物ホルモンが存在しているのかの解明にチャレンジした。すなわち、凍結ミクロトームで連続切片を作成し、切片ごとの植物ホルモン定量にチャレンジした。困難が予想された凍結切片での植物ホルモン定量に成功し、サイトカイニンが早・晩材材形に関与するとする仮説を支持する知見を得ることができた。スギ苗木を用いたポット実験で、土壌中の水分量、根の形成および樹幹の木部形成について知見を得た。これらの成果からおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新たに開発した連続凍結切片での植物ホルモン定量方法を用いて、平成29年度で得られたデータの蓄積をおこない、信頼性の高いデータを基づき、早・晩材形成を議論する。 スギ苗木を用いたポット実験で根や樹幹の植物ホルモンを定量し、土壌中の水分、根の形成、樹幹の木部形成および植物ホルモン量との関係を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、新たな分析方法の開発に成功し、新規性の高いデータが得られたものの、原著論文としてまとめるには、データ数を増やす必要があると判断した。投稿論文にかかる費用を使用しなかったので、次年度に繰り越すこととした。
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