2016 Fiscal Year Research-status Report
セルロースを用いた高イオン伝導性アニオン交換膜の開発
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16K07816
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Research Institution | Aomori Prefectural Industrial Technology Research Center |
Principal Investigator |
葛西 裕 地方独立行政法人青森県産業技術センター, 工業部門, 主任研究員 (50523502)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高分子電解質 / セルロースナノファイバー / イオン伝導 / 燃料電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
セルロースは自然界に最も多量に存在する天然高分子であり、人体に無害で生分解性であるという特徴を有している。この再生可能資源であるセルロースを燃料電池用電解質膜のような機能性材料として利用することは環境面でのメリットがあると考えられる。平成28年度はセルロースをスルホエチル化したスルホエチルセルロース(SEC)に対して、製法や原料の異なるセルロースナノファイバー(CNF)を複合化した架橋電解質膜を作製し、複合の効果について検討した。得られた主な結果を以下に示す。 (1)複合膜の引張強度はSEC単独の膜と比べ2~10倍に増加し、CNFの繊維幅が小さいほどより増加する傾向が見られた。複合膜の破断伸びはSEC単独の膜と比べ乾燥状態では低下し吸水状態では増加した。複合膜の破断伸びはCNFの繊維幅が大きいほどより増加する傾向が見られた。 (2)複合膜の含水時と乾燥時との寸法安定性は、膜面方向が0.01~0.06に対して膜厚方向が0.4~0.9であり異方性が見られた。このことからCNFは膜面方向に配向していると考えられた。 (3)セルロース自体はイオン伝導性を示さないので、TEMPO酸化CNFを用いた場合を除き、複合膜はSEC単独の膜よりもイオン伝導度は減少した。TEMPO酸化CNFを用いた複合膜ではSECのみの膜と同等のイオン伝導度を示した。これは複合膜の含水率が高かっためであると考えられるが、この高含水率がTEMPO酸化によりセルロースに導入されたカルボキシ基の影響によるものであるかは検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SEC電解質膜に対してCNFを複合化することによってイオン伝導度に与える効果の検討については一部平成29年度に実施予定の実験を含めて検討を行った。しかし、セルロースに対するアニオン化の実験が終了していないためアニオン化セルロースのイオン伝導度の検討が遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
アニオン化セルロース膜について、置換度とイオン伝導度、メタノール透過率、熱的・機械的性質などの物性との関係を評価することにより、アニオン化セルロース膜の作製条件と特性との関係を明らかにする。また、実用的な膜物性を保ちつつ高イオン伝導性を示す膜を得るためCNFとの複合化方法の検討を行い、膜の構造とイオン伝導性との関係を調べる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、備品であるホモジナイザーが当初の想定より安価に購入可能であったことや、試薬を無償サンプルとして入手可能であったことなどのためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り発電試験用のマスフローコントローラーを購入する他、学会発表のための旅費として使用する。
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Research Products
(1 results)