2016 Fiscal Year Research-status Report
海洋におけるカイアシ類とバクテリア類の相互作用に関する研究
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16K07825
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大塚 攻 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (00176934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 敏博 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (60164117) [Withdrawn]
浅川 学 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (60243606)
高田 健太郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90455353)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 浮遊性カイアシ類 / デトリタス食 / キチン / バクテリア / ウオジラミ / テトロドトキシン / 発光 / 光感覚器 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)黒潮流域に生息する中層性デトリタス食性カイアシ類Cephalophanesについて新知見を得た。消化管内からキチン分解能を持ったバクテリアの分離に成功した。また、消化管前端にある盲嚢に多量に蓄積した物体の同定について、蛍光物質Calcofluor White Stainで染色をおこなった結果、キチンで構成されていることが強く示唆された。その物質を加水分解し、NMRおよびMSによって化学物質の同定を現在行っている。本属のキチナーゼ遺伝子をcDNAクローニングによって解析した。ポリA鎖と終止コドンを含む3’側領域の増幅および配列を決定し、決定領域は3’側領域を含む934bpであった。 (2)近底層性デトリタス食性カイアシ類Macandrewellaの消化管内からキチン分解能を持ったバクテリア(Photobacterium spp.など)の多数の株を分離した。また、光感覚器官であるノープリウス眼のレンズは外骨格の一部が肥厚して形成されていることが透過型電子顕微鏡の観察によって判明した。。 (3)走査型電子顕微鏡の観察によってフグウオジラミ頭胸部背側にバクテリアのコロニーを確認した。Venmathi Maran et al. (2007)の先行研究では、5月に瀬戸内海で採集したヒガンフグに寄生していたフグウオジラミからRoseobacter sp.というテトロドトキシン産出能を持っているバクテリアを検出したが、本年度は本種の再検出ができなかった。今後、フグ類を異なる季節に採集して再試験を行う。 (4)日本に産する浮遊性および寄生性カイアシ類の分類・進化系統・生態、他生物との種間関係などに関する知見をまとめて論文として発表した。 (5)ウオジラミ科の分布、生態に関する知見、特に病原性バクテリアのベクターとしての浮遊性成体の出現について過去の知見を総括して論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)デトリタス食性カイアシ類とバクテリアの種間関係については顕著な進展が見られた。中層性Cephalophanesの消化管内からキチン分解能を持つバクテリアの検出、消化管前端盲嚢に蓄積している物質がキチンであることを示唆する結果の取得、キチナーゼの遺伝子の一部解析、などである。また、近底層性Macandrewellaのノープリウス眼の微細構造の一部の解明および消化管内からキチン分解能を持つ多くのバクテリア株の検出に成功した。 (2)トラフグ類に寄生するフグウオジラミからテトロドトキシン産出能を持つバクテリアの分離には度重なる試行にもかかわらず本年度は成功に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)デトリタス食性カイアシ類の消化管内から分離したキチン分解能を持つバクテリアについて遺伝子解析によって種同定を進める。さらに、それらの発光能の有無を調査する。視覚によって発光バクテリアの付着した甲殻類起源のデトリタスを検知し、それを摂食して栄養源としているというカイアシ類の摂餌戦略に関する仮説を立証することが本研究の目的の1つである。Cephalophanesにおいては、消化管内から分離されたキチン分解能バクテリア-消化管内でのキチン蓄積-バクテリアの発光現象の関係を整理できるように努める。検出されたキチナーゼ遺伝子については、今後5’RACEにより開始コドンを含む5’上流域の配列を決定し、遺伝子全長配列を明らかにして、他動物で知られるキチナーゼと化学的特性を比較する。また、Macandrewella の特殊なノープリウス眼の微細構造を機能形態的に解析し、どのような光学特性があるかを明らかにする。 (2)フグウオジラミからテトロドトキシン産生能のあるバクテリアを再検出するために、以下の点を考慮して再試行する。トラフグ類を季節を変えて、特にその産卵期に合わせて採集し、寄生するウグウオジラミからテトロドトキシン産出能のあるバクテリアの再分離を試みる。また、バクテリアの培養方法、条件の再検討をする。
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Causes of Carryover |
フグウオジラミからの分離バクテリアに係る実験は、当初想定した結果が得られなかったため、本年度末に予定していたバクテリアの同定のために使用する試薬類の購入が不要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
カイアシ類から分離されるバクテリアの同定に使用する試薬類の購入に充当する予定である。
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Research Products
(9 results)