2017 Fiscal Year Research-status Report
屋久島で独自の進化を遂げたアユ集団の保全生態学的研究
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16K07827
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
久米 元 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 准教授 (00554263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳下 直己 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (50434840)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アユ / リュウキュウアユ / 島嶼個体群 / 保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、これまでに屋久島でアユの生息が確認されている3河川(一湊川、宮之浦川、栗生川)で8月に目視調査を行い、成魚の生息状況について明らかにした。また、12月から1月に4河川(一湊川、宮之浦川、栗生川、永田川)の河口域で小型地曳網による仔稚魚の採集を行い、出現状況について明らかにした。前年度、宮之浦川の河口域で採集した仔稚魚の耳石解析結果をもとに、産卵期及び成長率の推定を行った。前年度同様、一湊川で成魚および食み跡は確認されなかったが、採集数は少ないにもかかわらず仔稚魚が採集されたことから(n=3)、資源量は低いが依然として個体群が存在していることが分かった。宮之浦川の最上流の定点1で個体数密度は2.8尾(100平米当たり、以下全て同様)、中流に位置する定点2で3.0尾とそれぞれ推定された。最も下流に位置する定点3では前年度同様、成魚、食み跡ともに確認することはできなかった。栗生川の支流である小楊枝川の一定点で個体数密度は4.0尾と推定された。前年度同様、各定点の個体数密度は、先行研究(5.0-50尾)と比べ著しく低い値を示していた。仔稚魚は12月に一湊川と栗生川、12月、1月に宮之浦川の河口域で採集することができた。耳石解析結果から、産卵期は11月、Biological-intercept法により日間成長率は0.38mmと推定された。屋久島のアユと同じ島嶼個体群であり、別亜種であるリュウキュウアユと比較した結果、成魚の生息密度は極めて低く、産卵期は短いこと、仔稚魚の成長率はともに低いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにアユの生息が確認されていた屋久島の河川で、現在の成魚及び仔稚魚の出現状況について明らかにすることができた。また、仔稚魚の耳石解析結果から、宮之浦川個体群の産卵期、初期成長について推定することができた。着実にデータが取得できていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに2年間実施した成魚の出現状況に関する調査を最終年度も継続して実施し、個体数密度の経年変化について明らかにする。現在、アユの生息状況が比較的良好な状態にある宮之浦川と栗生川で成魚の行動(縄張りの形成状況等)、仔稚魚の成長等の初期生活史特性について明らかにする。得られるデータをもとに、本土のアユ及び同じく島嶼個体群であるリュウキュウアユとの比較を行う。
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Research Products
(5 results)