2016 Fiscal Year Research-status Report
スケトウダラの資源量変動におよぼす卵サイズ,仔稚魚の成長速度,着底魚の栄養状態
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16K07834
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高津 哲也 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (50241378)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 卵 / 仔魚 / 稚魚 / 沿岸親潮 / 吹送流 / 栄養状態 / 輸送 / 噴火湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
スケトウダラ太平洋系群の資源量変動機構を解明するために,北海道噴火湾とその沖合域において,2016年12月中旬,2017年1月中旬と下旬,2月中旬と下旬,3月中旬と下旬に本種の浮遊性卵と小型浮遊仔魚を,2016年4,5月にFMTネット傾斜曳で浮遊仔稚魚を,2016年5,9,11月,2017年2月に幼魚用トロール網で着底稚魚の採集を行った。また,生息環境を明らかにするために,プランクトンネット鉛直曳採集による餌生物の採集と,CTD観測による水温塩分等の測定を周年行った。 2016年4,5月にFMTネットで採集された浮遊仔稚魚は,湾外よりも湾内,特に湾内北部で高密度に分布した。また体長は湾奥ほど大型であった。従ってこの水平分布は,2016年3月以前に主に湾口部から湾外にかけて産卵された卵・仔魚が,沿岸親潮の流入と,西北西の季節風の連吹による吹送流によって湾内に輸送されたものと推定された。また,沿岸親潮が流入する湾内北部は流出流が存在しないため湾外流出個体は少なく,流出流が認められる湾内南部に比べて高密度を示したものと考えられた。 着底後の稚魚は,湾内では2016年9月から12月までは6.4度から8.6度の水温を経験し,その後2017年3月下旬までに4.6度の水温を経験していた。この越冬期間中の胃内容物重量は,9月には体重の1%台を示したが,11月には1.8%から5.4%を示した。また相対肥満度は越冬中であっても低下していなかった。 2017年2月下旬から3月中旬の間に植物プランクトンのブルームが生じていた。また,3月下旬まで塩分33.3未満水温3度以下の沿岸親潮の流入は確認されず,2016年とは異なっていた。2017年冬季には湾内で産卵親魚はほとんど漁獲されていなかったことから,この年は,湾外で産卵された卵・仔魚が,主に吹送流によって湾内に流入していたものと推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調である。当初予定していた全調査回数に対して,荒天のため採集範囲を縮小した場合もあったが,ほぼ予定通り,周年にわたる調査を実施した。また,2016年12月分までのスケトウダラ仔稚魚の生物測定を終了し,現在5月採集個体の耳石日周輪解析に取り組んでいる。 また2017年1月から2月に採集された仔稚魚の抽出作業を終了し,計数と生物測定を完了し,3月の2回分の標本を残している。 餌生物環境の解析は2016年11月分までの解析が完了し,2016年12月と2017年1~3月分の解析を残している。
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Strategy for Future Research Activity |
耳石日周輪解析に努力量をさらに投入し,孵化時期と孵化サイズの推定,成長履歴解析を推進する。また,餌生物環境解析に注力し,2017年の植物プランクトンのブルーム後に生じる動物プランクトン豊度のピーク時期を明らかにする。 2016年5月に実施しFMTネット傾斜曳による浮遊仔稚魚と,トロール網着底曳による着底稚魚の体長差が生じた原因が,個体発生的な孵化日組成や成長速度の相違による分布層の偏りであるのか,それともFMTネットが大型浮遊稚魚を網口逃避で取り逃がしているのか解析し,純粋な個体群としての成長履歴を評価するためのベストな採集方法を明らかにする。
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