2017 Fiscal Year Research-status Report
スケトウダラの資源量変動におよぼす卵サイズ,仔稚魚の成長速度,着底魚の栄養状態
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16K07834
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高津 哲也 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (50241378)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 卵 / 仔魚 / 稚魚 / 沿岸親潮 / 吹送流 / 栄養状態 / 着底 / 噴火湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
スケトウダラ太平洋系群の資源量変動機構を解明するために,噴火湾とその沖合域において,2017年7月を除く毎月,浮遊卵と小型浮遊仔魚をプランクトンネット鉛直曳で,大型浮遊仔稚魚をFMTネット傾斜曳と幼魚用トロール網傾斜曳で,着底稚魚を同トロール網着底曳で採集した。また,プランクトンネット鉛直曳で餌生物を採集し,CTD観測による水温塩分等の測定を行った。 5月中旬のFMTで採集された浮遊稚魚は,より大型採集器具であるトロール網傾斜曳よりも小型であったため,網口逃避が生じているものと推定した。同時期のトロール網傾斜曳と着底曳の尾叉長の中央値間に差はなく,ともに36~40mmにモードがあった。一方,6月中旬のトロール網傾斜曳では61~65mmに,着底曳では66~70mmにモードがみられ,着底曳でのみ75mm超の稚魚が採集されたことから,6月に75mm前後での着底を推定した。この着底期の食性には個体発生的変化がみられ,小型個体がかいあし類を主食としていたのに対して,大型個体はより大型なツノナシオキアミと浮遊性端脚類を捕食していた。噴火湾周辺海域では昼間ツノナシオキアミは,海底に集中分布することが知られている。また本研究で肥満度は着底の前後で変化がなかったことから,昼間の海底直上は好適な餌生物環境と推定した。 スケトウダラの全長7mmの仔魚から尾叉長65mmまでの稚魚の主要餌生物であるかいあし類の動態を,過去に遡り解析した。2015~2017年のいずれもブルーム時期の年変動より狭い範囲である2月下旬から3月上旬に2~3倍に高密度化しており,その後は高水温年に高密度傾向を示した。冷水性のかいあし類の割合は,低温な沿岸親潮の湾内への流入前からすでに高くなっていたこと。従ってかいあし類の動態は,北西の季節風に起因する吹送流による湾内への移入と水温が重要な役割を担っているものと推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた全調査回数に対して,荒天のため採集範囲を縮小した場合もあったが,予定通り使用船舶の定期検査工事があった7月を除く毎月,調査を実施した。2018年1月に採集された仔稚魚までの抽出作業を終了し,2月以降の2回分の標本を残している。 また,2018年1月分までのスケトウダラ仔稚魚の生物測定を終了し,現在耳石日周輪解析に取り組んでいる。 餌生物環境の解析は2017年5月分までの解析が完了し,2017年12月と2018年1~3月分の解析を残している。
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Strategy for Future Research Activity |
耳石日周輪解析に努力量をさらに投入し,孵化時期と孵化サイズの推定,成長履歴解析を推進する。特に着底期前後の稚魚の成長様式の変化を,2018年6月に採集されるデータを含めて3年間で比較し,成長率あるいは卵サイズ(母親)依存的な選択的生残の有無を明らかにする。 秋季から冬季に採集された稚魚の栄養状態の年変動を解析し,寒い冬に栄養状態の低下がみられるか検証する。
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Causes of Carryover |
予定していた大学院生による研究補助業務が,本人の就職活動によって年度内に実施できなくなり,年度を繰り越したため(時給1,000円で5時間を2日間,計10,000円の賃金と,雇用保険23円,総計10,023円)。5月中に雇用する予定。
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