2016 Fiscal Year Research-status Report
サンゴ礁生態系における付着珪藻群集の影響評価のための基礎的研究
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16K07838
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
鈴木 秀和 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (90432062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南雲 保 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (70120706)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分類学 / 付着珪藻 / サンゴ礁生態系 / 形態 / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は(1)モニタリングフィールドの選定,(2)出現種の同定及び付着様式の把握,(3)藻類群集構成種間の相互関係の把握を目的とし,下記研究課題を遂行した。その成果は平成28~29年の国内外の学会及び論文誌に公表及び予定である。 1. 沖縄県産海草コアマモ葉上の付着珪藻相:サンゴ礁生態系内に発達する小型海草類による大規模群落は高い生物生産力を有する独特の生態系が成立している。本研究期間ではその主要な構成種の一つである付着珪藻の植生調査を沖縄県薮地島産海草コアマモについて行った。その結果,草体上から27属113分類群の珪藻類の出現が確認した。その多くは温帯性~亜熱帯環境に適応した種であり,全体として多数の分類群が少数生育する傾向が見られた。 2. 沖縄県産汽水藻上の付着珪藻相:サンゴ礁生態系の周辺にはマングローブ林の発達する汽水域がある。この海域は河川の流入量や潮汐により一日のうちの塩分等が大きく変化する特殊な環境であり,サンゴ礁生態系に対する影響は大であると考えられる。本研究期間ではその主要な構成種の一つである付着珪藻の植生調査を沖縄県塩屋湾産汽水藻紅藻3種について行った。その結果,11属10種7未同定分類群を確認した。このうち,主要構成種であったDenticula属とLuticola属について光学及び高分解能走査型・透過型電子顕微鏡観察を行い,両属の新たな分類形質を明らかにした。 3. 東京湾京浜運河産藍藻上の付着珪藻相:サンゴ礁生態系において珪藻と藍藻は共に一次生産者として重要な役割を担っている。本研究期間においては継続的調査が可能な東京湾京浜運河において藍藻上の付着珪藻植生調査を行った。その結果,13属18分類群10未同定分類群を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画における(1)モニタリングフィールドの選定,(2)出現種の同定及び付着様式の把握,及び(3)藻類群集構成種間,特に珪藻と藍藻の相互関係の把握,に関しては,ほぼ目標達成が見込まれる結果が得られた。具体的には,(1)と(2)は,沖縄県本島中北部沿岸域(特に備瀬崎及び塩屋湾周辺沿岸域)と沖縄県宮古島沿岸域が,これまで得られている資料と比較検討し得るフィールドとして選定された。出現が確認された主な分類群については,生細胞及び処理細胞の光学及び高分解能走査型・透過型電子顕微鏡観察を行い,それらの生育生態,色素体等の細胞内小器官の配置と構造,珪藻被殻の殻及び帯片の微細構造を明確にした。さらに特定分類群に関しては新たな分類形質を明らかにした。(2)及び(3)は,珪藻の季節消長や付着戦略等の生態的特性のモデル化を示唆する資料を得た。特に(3)に関しては長期間の継続調査可能なフィールドとして東京湾沿岸域が良好な観察地であることが判明した。従って,次年度以降の実験的調査に関してはここも対象フィールドとして継続的なデータを収集していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に得られた結果をもとにして,さらに平成29年度は,(1) 前年度に引き続き,南西諸島沿岸でのサンプリングサイトの選定のために,サンゴ礁海域の多様な基質環境からの付着珪藻を採集する。これをもとに各付着基質上の付着珪藻相の概要を把握し(フロラ研究),本研究の目的と合致するサイトであるかの検討を行う。(2) フィールド探査と同時に採集した試料をもとに,光学及び高分解能走査型・透過型電子顕微鏡観察による形態学的情報を収集し,分類学的アプローチにより出現種及びそれらの付着様式を把握し,サンゴ礁海域における付着珪藻群集のより詳細な分類学的及び生態学的情報を得る。(3) 平成28年度からの調査により選定されたフィールドにおける定期的な採集により,基質上の付着珪藻群集の現存量と種組成の季節消長等の動態を把握する。(4) 平成28年度からの調査により知り得た群集の主構成種を温度設定培養庫を用いて単種培養し,その生殖過程と生活環を把握する。(6) パーソナルコンピューターとデータベースソフトを用いて,継続的なフロラ研究や動態調査,培養実験により知り得た群集の主構成種の分類学的及び生態学的資料のデータベース化に着手する。年度末には課題(1)~(3)の実施から得られた結果を取りまとめ,それらの成果発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた冬季~春季調査が天候不順により,それに充てていた調査が実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度予定していた調査地を本年度分調査として実施する予定であり,前年度未使用分はそれに充てる予定である。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] Microcostatus salinus sp. nov., a new benthic diatom (Bacillariophyceae) from esturarine intertidal sediments, Japan2016
Author(s)
Li, Y., Suzuki, H., Nagumo, T., Tanaka, J., Sun, Z. & Xu, K.
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Journal Title
Phytotaxa
Volume: 245
Pages: 51-58
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Epiphytic diatoms on a red alga Laurencia nipponica Yamada from Hokkaido, Northern Japan2016
Author(s)
Nagumo, T., Egawa, T., Suzuki, H., Matsuoka, T. & Tanaka, J.
Organizer
24th International Diatom Symposium
Place of Presentation
Qubec, Canada
Year and Date
2016-08-22
Int'l Joint Research
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